成長実現ケースでは、2029年度以降20~30年間の実質経済成長率が、0.3%から1.1%とされています。
最も高い場合でも、財政収支試算の値よりは1%ポイント程度低下することになります。つまり、長期的には経済成長率が低下していくと予測されていることになります。
ベースラインケースでは、2029年度以降20~30年間の実質経済成長率が、マイナス0.6%から0.3%とされています。
このように、成長率がマイナスになることもありうると予測されているのです。
実質賃金の見通しが高すぎるカラクリとは
ところで、財政検証においては、実質成長率の低下が予測されているのですが、その反面で、実質賃金の上昇率はかなり高く予測されていることに注意が必要です。
どのケースにおいても、実質賃金の上昇率は、実質経済成長率よりは0.5%程度高くなっているのです。
過去数年の日本経済の実情をみると、実質経済成長率はプラスでしたが、実質賃金上昇率はおしなべてマイナスでした。
これを考えても、財政検証における実質賃金の想定の高さは異常です。
実質賃金の伸びが高いと、保険料収入は増加しますが、すでに受給中の年金額である「既裁定年金額」は増加しません。したがって、年金財政には有利に働くのです。
財政検証における実質賃金の高すぎる見通しは、年金財政における問題点を隠蔽する効果を持っていることに注意が必要です。
このほかにも、いくつかの長期推計がなされています。
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