オランダ発、「電気の共同購入」は普及するか 自治体と提携、環境に優しい電気を安く提供

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1つは、主に地方自治体と一緒に取り組むことによる信頼性や、透明性・公平性が担保された入札プロセスを藤井社長は挙げる。「入札に際しては、自治体との協議によって定めた厳格な基準に基づいた入札手続きによって、複数の販売事業者を選定している」(藤井社長)。アイチューザーは、契約が成立するごとに手数料の形で収入を得る。

もう1つは、仕組みがシンプルなことだ。「希望者に伝える情報はできるだけわかりやすく簡素にし、もっともいいと思われる条件で落札した少数の企業の提案だけを希望者に伝えている」(藤井社長)。

8割以上の家庭は新電力をいまだ「様子見」

2016年4月に電力小売りが一般家庭を含めて全面自由化されたものの、既存の大手電力会社からの契約の切り替え率は17%弱(2019年9月末現在)にとどまる。つまり、8割以上の家庭はいまだに「様子見」の状態だ。

神奈川県での太陽光発電設備の共同購入事業説明会の模様(写真:アイチューザー)

既存の契約から切り替えた場合、一般に5~10%程度の料金を削減できるものの、電気料金が下がる仕組みを理解すること自体を面倒だと感じ、決断を躊躇する消費者は多い。「当社はこうしたユーザーに決断を促す仕組み作りに長けている」と藤井社長は説明する。

この仕組みに参加する側の電力会社にもメリットがある。テレビCMや戸別訪問など営業費用をかけずに、まとまった数の顧客を手に入れることができる。広告宣伝費がかからない分、電力会社は提供する電気料金を引き下げられる。自治体にとっても、補助金などの財政支出なしで、地域での再エネ電気の導入拡大につなげることができる。

アイチューザーが本拠を置くヨーロッパは、電力自由化で日本のはるか先をいく。そこで生まれたビジネスは日本でも成功するのだろうか。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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