38歳A.T.カーニー新代表「関灘茂」の圧倒的努力 「コンサルティングの仕事は一生飽きない」
どうやったらそんなことができるのか。関灘氏が尋ねると、マネージャーから返ってきた答えは「右脳と左脳をダイナミックに使うんだよ」というざっくりしたものだった。
ほかにも「名物」と言われる数々の上司との出会いがあった。関灘氏のメンターだった人物は長考力が特徴で、ミーティングは実に10時間。
「ずーっとぶつぶつつぶやいていて、新卒は何も貢献できない。『聞いているだけでいいよ』と言うのでひたすら聞いているんですが、つぶやきなから、目の前のホワイトボードに本当に論点や解決策がすらすらと出てくるんです」
自分の脳の使い方、考え方を変えないと、ここにいる人たちの足元にも及ばない。入社後、3カ月ほどでそう悟ったという。休日には書店に駆け込み、速読本やフォトリーディングの本を読みあさった。ついには「波動リーディング」なる書籍も発見する。もはや手をかざせばわかる。これでマネージャーに勝てるかもしれない。
「書籍に手をかざしてみるわけです。『……わからない!!』となりまして」
結果的に、ある程度事前知識がある本であれば、速読術やフォトリーディングは有効だということがわかったそうだ。こうした苦難の日々を乗り越えると、1カ月に100~200冊くらいの書籍を読めるようになった。
「面白い」ってなんだ?
2年目にはシニアビジネスアナリストに昇進。しかし今度は「言われたことは正確にできるけど、Something newがない。面白くない」と言われ続けることに頭を悩ませる。
「確かに自分が言っていることは面白くない。面白い、感動したって何だろうと思うと、お笑いや漫才師って面白いなと。あとは映画監督、ミステリー小説作家とか。
Something newを出す方法を見いだそう。そう思って本、テレビ、映画などあらゆる領域からインプットしました」
当時ヒットした映画『マトリックス』に至っては、100回見ることに決めた。
「僕は一度見ただけではわからなかったんです。なんでこんな難しい映画がヒットするのか。ひたすら映像を見る。ひたすら人物を見る。ひたすらセリフを聞く。何が人に刺さるのか、心を動かすのかを見いだすために」
試行錯誤を繰り返していた入社4年目のある日、ある自動車メーカーから提案の依頼があった。「日本のすべての経営コンサルに当たったが、いい提案がない。カーニーでもだめならこのプロジェクトは中止する」。
当時アソシエイトだった関灘氏は、上司だったパートナーから「2週間あげる、お金はいくら使ってもいいから、クライアントが感動するような提案書を書け」と指示を受ける。資料の読み込みや現地調査を繰り返し、1週間ほど経ったある日。関灘氏は夢の中でキーワードを思い付き、慌てて飛び起きると1枚紙で提案書を作った。
「それをクライアントにお持ちしたら『これだ!』と言われました。やっとSomething newを出せた瞬間でした。『マトリックス』を見て、100回試行錯誤したかいがあったかな」
以来、コンサルティング業界では「火消し」と呼ばれる役回りでもあちこちのプロジェクトから声がかかるようになる。火消しとは、いわゆる炎上プロジェクトに投入されて出火原因を探し、落ち着かせる役目のこと。「だいたい1~2週間で、どんなプロジェクトでも消火ができるようになりました」。
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