38歳A.T.カーニー新代表「関灘茂」の圧倒的努力 「コンサルティングの仕事は一生飽きない」

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1次のグループ面接では、学生3人に対し面接官は2人。まず聞かれたのは「リーダーシップとは何でしょうか」。

「『未来・向かうべき方向性を描いて、共有して、みんなで歩むことです』と答えました。回答への反応はあまりなく、2つ目の問いが投げかけられました。『日本には電柱が何本ありますか』」

ちなみに、これは「フェルミ推定」という質問で、実際に調査するのが難しいような数量を、論理的に推論して回答するもの。当時の外資系経営コンサルティング会社の面接ではお決まりのものだ。

「1本ずつ数えます!」

それは当然知っていた関灘氏だが、思わずこう答えてしまった。

「本気でお知りになりたいですか? だったら私、日本の南から1本ずつ数えますよ!」

グループ面接が終わった後、一緒に面接を受けていた京大生たちが「あれはフェルミ推定って言うんだよ。あんな回答をしたら受からないよ」と教えてくれた。ところがそのグループ面接を通過したのは、関灘氏1人だけだった。

2次面接のグループディスカッションも通過し、最終のジョブ選考までたどり着いた。一人ひとりの学生に異なる経営テーマが提示され、5日間で現状と問題点、課題、解決策を検討する。最終日に複数のコンサルタントに対してプレゼンテーションし、質疑応答するプロセスで総合的に評価される難関だ。

当時は、学生1人に対して、マネージャーかアソシエイトが1人ついて、毎日1時間ほどの議論・フィードバックがなされる。しかし、関灘氏の担当は、その上のプリンシパルだった。

「普通は、フィードバックのときはマネージャーが学生を呼びに来てくれるんです。でも、人事から『プリンシパルだから、呼びに来るような人じゃない。個室に自分で行ってください』と言われて。ドアを開けたら、髪がなくてひげを生やした王様みたいな人が座っている。思わず『ボス!』といってしまった。そうしたら『ボスって呼ばれたのは初めてだ』と笑われました」

「『ディナーに来ないなんて、本当に入社するのか!?』と社内では驚かれていたようです」(関灘氏)(撮影:梅谷秀司)

プリンシパルからフィードバックを受けた5日間は、「脳の中がすべて見透かされ、言語化されているという衝撃」(関灘氏)。

最終日の夜にはジョブを終えたご褒美と懇親を兼ねてディナータイムが設けられる。そこまで選考に残った就活生であれば、参加しないなど想像もつかない。しかし5日間で8時間ほどしか寝ておらず疲労困憊の関灘氏、1人だけキャンセルして帰ってしまった。

そんな関灘氏であっても、入社後は戦略コンサルの洗礼を受ける。初めて与えられたお題は「非接触ICのポテンシャルについて評価せよ」だったという。

まず資料を集めた関灘氏。50~60cmほどはある積み上がった資料の山を前に、当時の指導担当だったマネージャーは「じゃあ今日中にWord20枚の資料にまとめておいて」。

「無理です」。反射的にそう言った関灘氏に、「あのさ、学生気分はやめてくれない?」と言い放った。見本を見せてあげる――。資料をぱっと開いて、マーカーですっとポイント箇所に線を引いていく。資料の山が1時間ほどでなくなってしまった。

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