単なるショーだった「逃亡ゴーン会見」の舞台裏 関係者が拍手する政治集会のような雰囲気
2018年11月18日に逮捕されて以来、ゴーンはアメリカや日本向けの広報担当企業を何度か替えているが、グローバル向け戦略については逮捕直後からずっとイマージュ7及びモー氏に任せている。今回、会見に入れる人選をしたのもゴーン氏の指示を受けたモー氏である。
本当は会場の「真ん中」で話したかった
会見には、CNNやニューヨーク・タイムズ、ウォールストリートジャーナルなど、多くのアメリカメディアも訪れていたが、奇しくもこの日、関係が悪化するイランが、イラクにある米軍基地に弾道ミサイルを発射。アメリカメディアはゴーン会見どころではなかったかもしれない。
他国のジャーナリストからも「自らがイランの支援を受けたヒズボラの誘拐ターゲットになるかもしれないから大変だ。必ずセキュリティガードと行動しないと危ない」と危惧する声が聞かれた。実際、ヒズボラの支配下にあるベイルートの空港には、殺害されたイランのソレイマニ司令官のポスターがそこら中に掲げられている。
会場はとても暑く、参加者は窓を開けてほしいと頼んだ。緊張感に包まれた会場では、カメラマン同士や記者がもめているのも見受けられた。ゴーン氏が妻のキャロル氏と会場に着いたのは、現地時間の2時55分(日本時間21時55分)。会見が始まる5分前だ。会場に入る時も多くの報道陣に取り囲まれた。
会場に入るとゴーン氏は前方に用意されたステージまで進み、そこで話をしたが、実は会見前は報道陣の「真ん中」に立って話すことを希望していた。ドナルド・トランプ大統領や、エマニュエル・マクロン大統領がそうするように、多くの人々に取り囲まれている姿をテレビに映したかったのだ。アリーナの真ん中に立っているボクサーやミュージシャンのイメージだ。
さらに今回、ゴーン氏は会見をできるだけグローバルなものにしたいと考えていた。1時間以上に及んだスピーチ後、質疑応答までの休憩時間にゴーン氏は、報道陣の中に分け入って彼らと言葉を交わした。そして「アメリカ人はいませんか? フランス人? 日本? イギリス? ああ、イタリアの人ね」と聞きまわり、どの国の報道陣にも1つは質問を出して欲しいと頼んでいた。
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