ゴーン被告、逃亡を可能にした「主犯」は誰か 検査なし、プライベートジェットに抜け穴

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気になるのが、プライベートジェットに保安検査がなされていない空港がほかにもあるのかどうかだ。国内でプライベートジェット専用の施設があるのは、関空以外では成田と羽田、中部の3空港のみ。国際線の乗降客数が一番多い成田国際空港には、駐車場や車寄せを完備したプライベートジェット専用ターミナルがある。成田は保安検査のエリアを設けているものの、その実施状況については「(空港が提供する)X線検査を運航会社が希望した場合は把握できるが、そうでなければ難しい」(成田国際空港)。

羽田には、空港に隣接するホテル「ザ ロイヤルパークホテル 東京羽田」の建物内にプライベートジェット専用施設が用意されている。羽田の国際線ターミナルを運営する東京国際空港ターミナルは「部外者や不審者対策として(プライベートジェット専用施設に)警備員を配置している。(関空と)同じことはうちでは起こりえなかった」と説明するが、配置された警備員に乗客の荷物の中身を確かめる権限がない状況は関空と変わらない。

国土交通省は保安検査を義務化

一方、ゴーン逃亡の余地があったと認めるのが中部国際空港だ。中部で出入国するプライベートジェットの利用者数は非常に少ないとしたうえで、「運航会社の責任の下で実施される保安検査が、どれだけなされていたかの肌感覚はない。関空だけの問題だけでない」(中部国際空港)とした。

こうした実態を受け、国土交通省は1月6日、前述の4空港すべてにおいて、大型荷物の保安検査を義務化した。具体的にどんな大きさの荷物で保安検査を義務化するのか明らかにしておらず、今回の逃亡劇が悪用されることへの危機感がにじみ出ている。

航空業界内で保安検査以上に問われているのが、CIQを行う税関や出入国在留管理庁の責任だ。ある関係者は「プライベートジェットの保安検査が性質上義務化されていないのは、テロやハイジャックのリスクを鑑みれば自然なこと。むしろ、出国させてはいけない人物や輸出不可の物品を確かめる出入国在留管理庁と税関が、大人1人が入るほど大きな入れ物を不審に思う必要があった」と憤る。

世界的なプライベートジェットの普及はもちろん、東京五輪開催、富裕層を顧客に抱えるラグジュアリーホテルの進出加速など、今後も日本でのプライベートジェットの利用は増加が見込まれ、政府も積極的にインフラ整備を進めている。今回の事件がプライベートジェットの利用普及に水を差すことになるかもしれない。

森田 宗一郎 東洋経済 記者

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もりた そういちろう / Soichiro Morita

2018年4月、東洋経済新報社入社。ITや広告・マーケティング、アニメ・出版業界を担当。過去の担当特集は「サイバーエージェント ポスト藤田時代の茨道」「マイクロソフト AI革命の深層」「CCC 平成のエンタメ王が陥った窮地」「アニメ 熱狂のカラクリ」「氾濫するPR」など。

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