安倍首相、「内憂外患でもゴルフ」の本当の狙い イラン攻撃、IR疑惑噴出でも余裕をアピール

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自民議員4氏はそろって「金はもらっていない」と否定しているが、同議連副会長で維新の下地幹郎・元郵政民営化担当相は、6日の記者会見で100万円を受け取り、政治資金収支報告書に記載していなかったことを認め、維新に離党届を提出した。

松井一郎・維新代表(大阪市長)は「議員辞職すべきだ」と厳しい姿勢を示した。下地氏が議員辞職すれば、自民議員4氏のいずれかが金を受け取っていたことが発覚した場合、議員辞職を迫られることになり、政権への打撃は少なくない。

IR法はもともと、安倍首相が打ち出した成長戦略の一環として、政府与党が2016年暮れの臨時国会で強引に成立させた経緯がある。このため、主要野党は通常国会で政府に整備中止を迫る方針だ。

菅義偉官房長官は6日の民放テレビ番組で「IRは日本が観光大国を目指すうえで必要だ。これ(整備)と今回の事件は明らかに次元が違う」と強調。政府として事業を推進していく考えを強調したが、通常国会の与野党攻防の大きな争点となるのは確実だ。

政権を揺さぶるゴーン被告の大脱走

菅氏は自民党の二階俊博幹事長とともにIR事業推進の旗振り役ともみられている。与党内では「事件が大規模なIR疑獄に発展すれば、菅氏らの立場も苦しくなる」(閣僚経験者)との声も出る。安倍首相はIR汚職についての質問に反応することを避けているが、捜査の進展次第では厳しい対応を迫られる可能性が大きい。

ゴーン被告の大脱走も政権を揺さぶっている。日本の司法制度をあざ笑うようなレバノンへの脱出劇はスパイ映画さながらで、世界中のメディアが注目し、さまざまな情報が飛び交っている。ところが、司法トップの森雅子法相が記者会見して「被告人が日本を出国した記録がないことが判明しているので、不正な手段を用いて不法に出国したものと考えている」などと認めたのは、ゴーン被告の脱走から1週間以上経った1月6日のことだ。

ゴーン被告は8日夜(日本時間)にベイルートで記者会見するなど、日本の司法との対決姿勢を国際社会にアピールし、日本政府の対応も問われる状況となった。日本の司法制度が踏みにじられたにもかかわらず、安倍首相も記者の質問を回避し続けている。

政治的にきな臭い事件が相次いだ年末年始だったが、安倍首相は9連休を満喫した。ゴルフにも4回出かけ、大学時代の友人や財界関係者、さらに親族や秘書官と名門ゴルフコースでプレーし、「おかげさまでゆっくりしました」と笑顔をふりまいた。休暇のほとんどは都心部の高級ホテルで過ごし、食事は連日、家族や友人と中華、フレンチ、和食に舌鼓を打ってご満悦だったとされる。

安倍首相がことさら余裕と自信をアピールしたのは、自民党内での反安倍の動きを牽制する思惑もあるとみられる。ポスト安倍を目指す面々は、石破茂元幹事長を除いて首相の顔色をうかがう状況が続いている。安倍首相は年末年始の民放テレビインタビューなどで、自らの後継候補について、岸田文雄政調会長、茂木敏充外相、菅義偉官房長官、加藤勝信厚生労働相の4人の名前を挙げた。

安倍首相が後継者について個別の名前を表立って並べたのは初めてで、あえて石破氏の名を外したことも注目される。

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