日本の政権首脳が「トランプ再選」を熱望する訳 米大統領選の予測はそんなに簡単ではない

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まず、前述の6人の民主党候補者は、民主党中道派(バイデン、ブルームバーグ、ブーテジェッジ、クロブシャー)、あるいは民主党進歩派(サンダースおよびウォーレン)に分類できる。

民主党中道派は、進歩派のサンダースもしくはウォーレンが同党の指名候補者となった場合、1972年にジョージ・マクガヴァンがリチャード・ニクソンに、そして1984年にウォルター・モンデールがロナルド・レーガンに負けたときのように、民主党がトランプに負けることを懸念している。一方進歩派は格差、貧困、社会的権力の不平等を是正するには根本的な構造改革しかないと考えている。

2点目の民主党のメッセージは、どの候補者が指名されるかによって決まる。バイデンのキャンペーンは「アメリカは理念の国」であり、「われわれはアメリカの魂のために戦っている」と断言している。これはバイデンがバラク・オバマ前大統領の副大統領だった時代への回帰を意味している。

一方、サンダースは、全国民のメディケア加入、グリーン・ニューディール、全国民の大学進学、全国民の住居確保、富裕層への課税、第1期での組合員数の倍増をはじめとする職場民主主義を含んだ「21世紀経済権利憲章」を主張している。

トランプ弾劾訴追の影響は

3点目のトランプに対する有権者の評価は、今から選挙までに彼が取る行動によって決まる。有権者の支持を得るためにどのような新しい政策を発表するのだろうか。

新たな減税か、それとも農業従事者支援の補助金か。雇用創出のための新しい貿易協定、あるいは、自身の支持層に訴える新しい移民制限か。勝利宣言を可能にし、熱望するノーベル平和賞につながる北朝鮮との「取引」か、もしくは、アメリカ国民を味方につけるためのイランとの対立か。

4点目の大統領の弾劾訴追プロセスが選挙に与える影響は不透明だ。アメリカ下院議会では、昨年12月18日にトランプの弾劾訴追を圧倒的多数で可決したが、上院でいつどのように審議が行われるのかは未定である。その進展、新たな証拠の登場、そして有権者に及ぼす影響は、大統領選だけでなく民主党が下院で過半数を維持できるかどうか、そして共和党が上院で過半数を維持できるかどうかに影響を与えることになる。

5点目の経済は、これまでトランプの強みとなってきた。中国との貿易戦争や、一部の経済学者による迫りくる景気後退や大幅な反落、あるいは少なくとも減速の予測にもかかわらず、マクロ経済的データはGDPの成長、失業率、株式市場で好成績を上げ続けている。

巨大な富と収入の格差は依然として存続し、貧困の地域は相変わらず残り、賃金の伸び率も弱いが、現時点の経済データはトランプにとって有利だ。もしこれが変わるようなことがあれば、大統領の功績に対する有権者の評価に影響が出ることは間違いない。

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