“ハイテクニッポン”の最後の砦は今…無敵神話もついに崩壊!? 素材各社の模索

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 同社がチラノ繊維の研究を始めたのは83年のこと。チラノ繊維の原料であるカルボシランの製造技術を東北大学の教授から会得した。今はカルボシランを紡糸、焼成してチラノ繊維を織り編み、米GE、米グッドリッチ、仏スネクマなど加工を行う炭化ケイ素メーカーに納入する。最終的に、米プラット・アンド・ホイットニーや英ロールス・ロイスなどのジェットエンジンメーカーで使用されている。

開発に携わってきた宇部興産・航空宇宙材料開発室の澁谷昌樹氏は、重視した点を「土壁の中に竹を組むこと」と表現する。竹がチラノ繊維で、土壁が炭化ケイ素。土壁が割れないよう、いかに良質の竹を作るか。顧客の絶え間ない要求に対応していくことで同社のチラノ繊維は羽ばたいた。2016年には米国でプラントの新設を視野に入れている。

基盤技術と顧客対応に磨きをかけてきたハイテク素材各社。彼らの牙城は厚く、容易に突き崩せないと思われてきた。だが、その神話に影が差し始めている。それはトクヤマの焦りとも共通する、ハイテク素材の汎用化、シェア陥落という問題だ。

韓国で進む垂直統合 崩れ始めた高シェア神話

7月、韓国系リサーチ会社のディスプレーバンクが発表したリリースが、業界の波紋を呼んだ。

韓国LGグループのLG化学が、09年4~6月期に10インチ以上の大型液晶用偏光板市場で、2四半期連続で世界1位を獲得したというのだ(面積ベース)。偏光板は光の進行方向をそろえる重要な部材。この市場は長く、日東電工と住友化学が計70%のシェアを握る双璧といわれてきた。2期連続で首位を奪われるということは、転換期が来たことを意味する。

盤石な基盤を築いていたはずの日東電工はなぜシェアを奪われたのか。その背景には、液晶テレビの低価格化、それに伴うパネルメーカーの材料内製化という変化があった。とりわけ後者は大きな意味を持つ。

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