なぜドル円相場はあまり動かなくなったのか 直接投資の拡大で日本の基礎的収支は均衡へ

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直近では「基礎収支」は黒字だが、「基礎収支(修正)」は赤字になっている。あくまで仮定のイメージゆえ、符号の差異に神経質になる必要はないし、そもそも上述したように基礎収支の多寡で通貨の信認を語る時代ではなくなっている。しかし、金融危機前は黒字が当たり前だった基礎収支が対外直接投資の急増を主因としておおむね均衡しているイメージに変わってきたという実情は長期的な議論をするうえで知っておいたほうがよい。

世界最大の対外債権国である日本の円の信認が早晩瓦解することは考えにくいものの、構造変化はゆっくりと、しかし確実に進んでおり、これが近年の「悪いことが起きても大して円高にならない」という相場につながっている可能性はある。日々のニュースに埋もれがちな構造変化にもしっかりスポットライトを当てて、現状や展望を議論していきたいと思う。

※本記事は個人的見解であり、筆者の所属組織とは無関係です

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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