大増刷「韓国・フェミ・日本特集」はなぜ売れたか 86年ぶりに3刷「文藝」が売れた理由

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井口:単行本化はいつ決まったんですか。

坂上:編集作業中からすでにやり足りないことがでてきましたし、特集自体、内容が非常に充実しているので、単行本にしたいね、という話はしていました。

斎藤:そうですね。この作家にも声をかけたいとか、ブックガイドも欲しいとか、いろいろ要望があって。

雑誌を買った人もさらに楽しめる充実ぶり

坂上:結局11月末に、斎藤さん責任編集で『完全版 韓国・フェミニズム・日本』として刊行しました。『文藝』に掲載された西加奈子さんやハン・ガンさんらの小説は別の単行本『小説版 韓国・フェミニズム・日本(仮)』として来年春頃に出そうと思っています。新しく書き下ろしも加える予定です。

今回の「完全版」は『文藝』の特集の再録だけでなく、気鋭のフェミニズム作家であるユン・イヒョンさんやパク・ミンジョンさん、イ・ランさんの日本初発表小説を新たに収録し、ファン・ジョンウンさんとチェ・ウニョンさんには書き下ろしでエッセイもいただきました。

日本側からは新たに書き下ろしで江南亜美子さん、倉本さおりさん、豊﨑由美さん、劇団雌猫のひらりささん、そして『文藝』で自伝的小説を掲載し話題になった韓国人ラッパーのMOMENT JOONさんといった方々のエッセーや論考もあります。さらにCUONさんにご協力いただいた「現代K文学マップ」も大充実です。

『82年生まれ、キム・ジヨン』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

『文藝』の特集も頑張ったつもりでしたが(笑)、「完全版」の見本ができたとき、「……これ、よくやったね……」とあきれるくらい、編集担当のあまりの気合の入りっぷりにびっくりしました。雑誌を買った人も、さらに楽しんでいただける内容になったかとは思います。

斎藤:ちょっと過剰なぐらい充実していると自負しております(笑)。

坂上:あと、「韓国文学一夜漬けキーワード集」の反響がすごく大きかったですね。一部で「ジャージャー麺」の反応がすごくよかったです(笑)。

斎藤:『おきなわキーワードコラムブック』という沖縄の出版社から出た本があって、むっちゃ面白いんですよ。私が沖縄に住んでいたときその本が大好きで、あれのまねをずっとやりたいと思っていたんです。

事典なんだけど、コラムみたいに読み物として面白く、いろんな人がそれぞれ執筆している。そのコンセプトを踏襲して楽しく作りました。確かに「ジャージャー麺」が大受けしたので、今回、「プンシク」とか「パッピンス」とか食べものの項目を増補していますよ。

(次回に続く)

井口 かおり 筑摩書房編集者

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いぐち かおり / Kaori Iguchi

単行本、文庫などを編集。編集した書籍に、『82年生まれ、キム・ジヨン』(チョ・ナムジュ著、斎藤真理子訳)など韓国文学や、『らりるれレノン』(ジョン・レノン、佐藤良明訳)、『きみを夢みて』(スティーヴ・エリクソン著、越川芳明訳、ちくま文庫)など英米文学、野口晴哉『整体入門』『風邪の効用』(ちくま文庫)、ブレイディみかこ、大友良英、松本哉のエッセイ集などがある。

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斎藤 真理子 翻訳家

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さいとう まりこ / Mariko Saito

訳書に、パク・ミンギュ『カステラ』(共訳、クレイン)、『ピンポン』(白水社)、チョ・セヒ『こびとが打ち上げた小さなボール』(河出書房新社)、ファン・ジョンウン『誰でもない』(晶文社)、チョン・セラン『フィフティ・ピープル』(亜紀書房)、チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』(筑摩書房)、ハン・ガン『回復する人間』(白水社)などがある。『カステラ』で第1回日本翻訳大賞を受賞。

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坂上 陽子 河出書房新社編集者

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さかのうえ ようこ / Yoko Sakanoue

2003年、河出書房新社に入社。「池澤夏樹=個人編集 日本文学全集」など単行本編集を経て、2019年1月より『文藝』編集長を務める。担当書籍に『想像ラジオ』(いとうせいこう)、『民主主義ってなんだ?』(高橋源一郎×SEALDs)、『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』(花田菜々子)、『居た場所』(高山羽根子)、『どうせカラダが目当てでしょ』(王谷晶)など。

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