「現代最強の経済学者」スティグリッツの挑戦状 ピケティと挑む「資本主義100年史」の大転換

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本書の内容はこれまでのスティグリッツの延長にあるが、彼はこれまでよりもより踏み込んだ領域に経済学の可能性を探しに行き始めたのかもしれない。

大きな転換を訴えるマクロ経済学の潮流

実はスティグリッツのほかにももう1人、すでにクズネッツに挑戦しようとしている経済学者がいる。

トマ・ピケティだが、『21世紀の資本』で有名な彼も格差拡大を問題視する名うての理論家だ。「金ぴか時代」(ベル・エポック)はピケティがよく使う言葉でもある。スティグリッツの新著とピケティの著書を併せて読み比べてみても面白いかもしれない。

学者たちから尊敬を集める2人の天才モデラー(理論構築を得意とする学者)は、軌を一にして、経済学100年の資本主義上のコンセンサスの転換に挑んでいる。

また最近、主流派重鎮のオリビエ・ブランシャールも、クルーグマン同様、主流派としてはかなり踏み込んだマクロ経済学観(財政政策のこれまで以上の重要性の強調)を表明して話題になっている。

スティグリッツやピケティに比べれば慎重ではあるものの、主流派の大御所たちの転換表明自体が経済学の新しい時代の幕開けを感じさせる。

経済学はいま、大きな地殻変動の中にあるのかもしれない。そしてその中心にいる人物は、間違いなくスティグリッツだろうと私は思う。

佐々木 一寿 経済評論家、作家

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ささき かずとし / Kazutoshi Sasaki

横浜国立大学経済学部国際経済学科卒業、大手メディアグループの経済系・報道系記者・編集者、ビジネス・スクール研究員/出版局編集委員、民間企業研究所にて経済学、経営学、社会学、心理学、行動科学の研究に従事。著書に『経済学的にありえない。』(日本経済新聞出版社刊)などがある。

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