「現代最強の経済学者」スティグリッツの挑戦状 ピケティと挑む「資本主義100年史」の大転換
スティグリッツ自身ももちろん、名うての新古典派の「巣窟」から頭角を現してきた理論家である。その彼自身が、いまの主流派に苦言を呈しているのだ。
格差問題をきちんと考えるように主流派経済学者たちに見直しを迫っているということであれば、主流派であっても柔軟な学者であれば、少し謙虚に見直しもしてみようと思う者もいるだろうし、スティグリッツもそれを期待しているに違いない。
実際、著名な理論家であるノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマンなど、かなり柔軟に対応する主流派学者も存在する。
そのような見直しプロセスによって主流派経済学がより汎用性を獲得し、より強靭になれるのであれば、主流派経済学にとっても耳が痛いとはいえ最終的に悪い話ではないだろう。
私は、今でもそのように楽観している。
ただ、スティグリッツは広がるばかりの格差拡大の深刻さに、かなりいら立っている様子ではある。
そして、もしかしたら主流派経済学の基本的な処方箋自体にとうとう“No”を突き付けつつあるのではないか。
本書を謝辞まで読み終えたとき、何か言いようのない違和感を覚えたのである。
資本主義100年の歴史を問い直す
最後の謝辞の結文では、ケンブリッジ大学留学時代に触れている。
スティグリッツはMITでの研究の総仕上げとして、ジョーン・ロビンソンのいたケンブリッジ大学に留学しているが、期間は1年ほどである。
ロビンソンはケインズの直弟子で、ケインズの直弟子たちのグループは「ケインズ・サーカス」と呼ばれていた。
ロビンソンはそのなかでも武闘派で鳴らしていたが、「数式で簡単に扱えるほど経済の不確実性は甘いもんじゃない」というケインズ・サーカスの経済観は、のちにポスト・ケインジアンと呼ばれる流派に受け継がれる。
そして、ポスト・ケインジアンは傍流の経済学派として今でも主流派から距離を置かれている。
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