「現代最強の経済学者」スティグリッツの挑戦状 ピケティと挑む「資本主義100年史」の大転換

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スティグリッツは、ケインズ・サーカスに言及し、資本主義制度を丸ごと疑うことで、主流派を相対化しようとしているのではないか。

並の経済学者であればともかく、スティグリッツであれば、あながちありえない話でもないだろう。

「資本主義は格差を広げる」か

そのようにも思いながら、再び序文を見返してみると、また何か引っかかるところが出てくる。

「私たちはこれまで、国がある発展段階に到達すれば格差は縮小する、アメリカはその理論を実証していると教えられてきた(注9)。<中略>だが、2016年の大統領選挙が行われるころには、19世紀末の「金ぴか時代」以来なかったほどのレベルにまで格差が拡大していた。」(前掲書より)

非常に注意深い言い回しで、具体的な人物名は注で後述に逃がしているが、資本主義経済が格差を広げるか縮めるかに関して、意味深長な記述である。格差を縮めるという意見に反対をしたいようである。

その「資本主義経済が格差を縮める」という意見を確立したのは、アメリカの黎明期の経済学で多大な功績を残した当時の最強の経済学者、サイモン・クズネッツである。

クズネッツは自由主義陣営(いわゆる西側諸国)の理論的支柱であり、対東側諸国(社会主義、共産主義陣営)としての、また第三諸国を自由主義陣営に誘ううえでの最重要の経済学者だった。

そのクズネッツのテーゼが「国がある発展段階に到達すれば格差は縮小する」、つまり資本主義経済による経済発展は分厚い中産階級を作ることにつながり、皆が裕福になり格差が縮まる、というものだ。

これはいまでも(例えば開発経済学等での)コンセンサスとして資本主義経済、市場経済推進の根幹をなす考えである。

クズネッツは最初期のノーベル賞経済学賞受賞者であり、西側諸国のコンセンサスを作ってきた、つまり現在の世界の大部分を形作ってきた大物中の大物だが、スティグリッツはいま、そのクズネッツに挑戦をしようとしているのではないか。

「クズネッツは本当に正しかったのか」

つまり、彼が必ずしも正しくなかったとしたら、主流派経済学はいま一度、相対化されたほうがいいのではないか。

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