金がないから「親の遺体を放置」が通用しない訳 「最低限の葬儀費用」は行政が負担してくれる
日本では行政が葬儀費用を負担してくれるにもかかわらず、なぜ遺体放置が絶えないのでしょうか。
考えられるのは、遺体を放置していた人に別の意図があった場合です。こうした事件の記事をよく読むと、「生前から故人に暴行をふるっていた」とか「故人の年金を不正に受給していた」などと書かれているケースがあります。お金がどうこうというのは苦し紛れのうそであって、不法行為の隠蔽が本当の目的だったのかもしれません。また、事件の背景を探らず、「葬儀をするお金がなかったから遺体放置」という見出しを多用するマスコミにも問題があると思います。
次に、放置した人が精神疾患や認知症を患っているケースがあります。生々しい話で恐縮ですが、専門的な処置を行わないと遺体はすぐに腐敗します。何かしらの事情もなく、腐敗し続ける遺体と一緒に居続けるのは難しいでしょう。
昔は、ご近所付き合いというものがあって、生活に困っている人を近所の住民たちが助け合う習慣がありました。都市化が進み、ご近所付き合いが崩壊した結果、何かしらの事情を持った人がサポートを受けられず孤立してしまい、こうした悲劇を招いているのかもしれません。
「葬祭扶助」が崩壊する可能性もある
繰り返しになりますが、今の日本で「お金がなくて葬儀ができない」ということはありえません。
しかし近い将来、「葬祭扶助」が崩壊する可能性もあります。現在、日本の年間死亡人口は136万人で、2040年には170万人前後に達すると言われています。葬祭扶助にかかる費用は死亡人口に比例して増えていくため、制度の見直しは避けられないでしょう。
前ページで、地方自治体が葬祭扶助の最終的なセーフティーネットになっていると述べましたが、これは現在でも地方自治体の財政を圧迫しています。
現場では民生委員(厚生労働大臣の委嘱を受けた社会福祉を担うボランティア)を葬祭扶助の申請者にすることで、生活保護法の適応に切り替え、自治体の一部負担を国に肩代わりさせることさえ行われているようです。
どうすれば国や自治体の負担を減らせるのでしょうか? 長時間労働にたえられなくなったため葬祭業を引退した人を民生委員として雇い、葬祭扶助の葬儀を担当してもらう形は有効かもしれません。直葬だけなら拘束時間も短く担当者に負担がかかりませんし、葬儀社に外注しないことで今よりも低コストに済みます。
しかし、これだけだと抜本的な解決にはなりません。今後なんらかの改革をしないと葬祭扶助の崩壊が予想されます。もしかすると、本当に「お金がないので親の遺体を捨てる」時代が来てしまうかもしれません。
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