ノバルティスに続き、武田薬品でも不正が発覚 第三者機関による調査の結果が焦点に

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説明をする日本開発センター部長の中村浩己氏

一方、②と③に関しては、ブロプレスの販促で不適切な点が2つあったと説明した。

まず、製薬協の販促規約では、学会発表時のデータは論文化の過程で変わる場合があるので、販促資材に利用するのは論文発表時のデータを使わなければならないのに、研究チームからもらった学会発表時のグラフをそのまま使ってしまった。しかも、これは社内の審査を通っていなかった。

2つ目は、販促資材で医師などに誤解を与える表現をしたこと。グラフでは時間経過とともにアムロジピンよりも優位性が出るように見えるものの、統計学的には有意な差がない。それなのに、ある時点で「クロス(交差)」が発生して、ブロプレスが優位になるような期待を抱かせ、さらに「長期に服用すると期待ができるのではないか」という専門医のコメントで補強した。なお、グラフが2つあることについては、武田は研究に関与していないので理由はわからない。

学会発表時に、さらに長期で比較すればその効用が証明されるのではないかという期待が研究関係者や武田社内にはあり、それがこうした表現につながったとしている。実際、CASE-Jは2007~2009年にエクステンション試験を行ったが、望む結果は得られなかった。すでに期待は雲散霧消したにもかかわらず、武田が当初の販促資材を使い続けてきたのは問題だろう。

不適切な販促を行ってきた

説明も含め会見は2時間超に及んだが、本当に元社員に利益相反的行為がなかったのか、誰が期待を抱かせるような販促戦略を立てたのか、なぜ使ってはいけないデータが載った販促資材が無審査になってしまったのか、期待が消えた後も従来の販促資材をなぜ使い続けたのか、といった疑問は、調査未了を理由に解消されなかった。長谷川社長は、現在選定を進めている第三者機関に調査を依頼、可及的速やかに結論を得たい、としている。

データ改ざんが絡んだディオバン問題はノバルティスの社内調査、第三者機関の調査によって解明ができず、司直の手に委ねられた。現時点でデータ改ざんの有無は不明だが、不適切な販促によって武田が過剰利益を得たという見方は成り立つ。第三者機関が疑問に答えられない調査結果を出すようだと、製薬メーカーへの国民のまなざしはさらに厳しくなるだろう。

筒井 幹雄 東洋経済 記者

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つつい みきお / Mikio Tsutsui

『会社四季報』編集長などを経て、現職は編集委員。

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