ノバルティス刑事告発、学会とメディアの罪 誰も責任をとらず、謝罪もない
厚生労働省は1月9日、ノバルティス ファーマと同社社員を、薬事法違反(虚偽・誇大広告の禁止)の疑いで東京地検に刑事告発した。同社の高血圧症治療薬ディオバンについては、東京慈恵会医科大学や京都府立医科大学などでの医師主導臨床試験に同社の社員が身分を隠したまま深く関与していたことが発覚。論文に掲載された試験データの改ざんも判明した。ノバルティスはこのデータに基づいて販促していた。
厚労省は薬事法違反の疑いがある販促資料の詳細を明らかにしていないが、ノバルティスは『日経メディカル』(日経BP社刊)などの専門誌を通じ、ディオバンの処方により心血管リスクを大幅に引き下げたと大きくPR。そこには日本高血圧学会の幹部も多く登場しており、理事の森下竜一・大阪大学大学院教授は「改訂中だった高血圧治療ガイドライン2009に大きな影響を与えた」(11年1月号)と称賛していた。
高血圧学会は刑事告発について沈黙を貫く。04年ごろから企画広告を掲載していた日経BP社は「審査のうえで掲載しており、問題ないと考えている。『疑問を持たれながらも、大量の広告を長年にわたって掲載し続けた』事実はない」とのスタンスだ。早くから不正を指摘していた桑島巖・臨床研究適正評価教育機構理事長は「誰も責任を取らず、謝罪もない」と学会や専門誌の姿勢を批判する。ノバルティスだけでなく、業界全体の課題といえる。
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