「トランプ弾劾」が示すアメリカの深刻な二極化 歴史的な裁判のお膳立ては整ったが
一方、共和党は、2016年以来の政治的不在状態を経て2018年に下院を勝ち取った民主党を非難。有権者の投票で得た権力を濫用し、大統領の正当性を絶対に認めないために訴訟を作り出してトランプ大統領を責めている、としている。それでも共和党は一部について譲歩したが、トランプ大統領に不利な数々の事実も弾劾の根拠としては不十分だと主張している。
「証言が出そろい、すべての手続きが済み、この弾劾の経緯が記されたら、ワシントンにいる私の民主党の友人たちはどうしてもドナルド・トランプと働く気にならなかったのだと書かれるだろう。だから、大統領を選出した人々、つまりアメリカ市民の声を抑え込むことで自らを慰めているのだ」と、共和党のマーク・メドウズ議員は語る。
これまで3人が弾劾訴追された
全身黒でまとめたペロシ下院議長は、昼ごろに本件に関する議論を開始するにあたり、「本日私は、下院議長として厳粛かつ悲しみを持ってアメリカ大統領の弾劾に関する議論を開始する。もし今行動を起こさなければ、われわれは自分たちの義務を怠ることになる。大統領の暴挙の数々から弾劾訴追が必要になることは悲劇的だ。大統領はわれわれに選択の余地を残さなかった」と述べた。
上院では、与党のリーダーである共和党のミッチ・マコーネル議員が下院の訴訟案件は「説得力に欠ける」との見方をすでに明確に打ち出し、1月に新たな事実証人を必要としない迅速な裁判の実施を申し入れている。そうすることで、ウクライナ疑惑の情報を持ちながら下院での証言を回避した複数の政府高官の聴取を連邦議会が行わない可能性が高まる。
弾劾訴追は立憲君主制のイギリスにまでさかのぼるが、アメリカ合衆国憲法の起草者たちは、その適用を大統領の行動が個人の利益により公共の利益を損なったなどのまれなケースに限定した。下院がこれまでに大統領を弾劾訴追したのは1868年のアンドリュー・ジョンソン大統領と、1998年のビル・クリントン大統領のわずか2回のみ。リチャード・ニクソン大統領は1974年にこのような結果となる前に辞任している。
ジョンソン大統領は、1868年に1票差で政権を維持した。クリントン大統領は、1カ月以上の審議の後、上院議員の有罪判決に対する半数以下の投票という結果で、より堅実なかたちで勝利した。トランプ大統領の裁判も同様の結果となる可能性が高いが、上院共和党員の中には、1週間弱で本件が終結する可能性を論じる声もあり、前例よりかなり早期の決着も考えられる。
73歳のトランプ大統領は、弾劾を「魔女狩り」と「デマ」として否定し、大統領としては前例のないような悪意を持って敵を攻撃している。共和党の多くの議員による絶対主義的防御と党派的性質が現れた18日の投票は、国民の過半数の支持を一度も率いたことがないというこれまでのイメージを塗り替え、トランプ大統領が共和党を支配し始めている、という顕著な粘り強さを強調する結果となった。
共和党のバリー・ラウダーミルク議員は、18日のトランプ大統領をイエス・キリストと比較し、民主党が大統領に与えた以上に、神の子はポンテオ・ピラトから「より多くの権利を与えられた」と述べた。