血液1滴でがん判別!東芝が生んだ技術の全貌 2時間以内に99%の精度でがん検査が可能に

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東芝の検査キットは、エックス線画像や内視鏡など目視で発見しにくい小さな腫瘍も見逃さない可能性がある。小さな腫瘍は初期のがんである「ステージ0」の可能性があるだけにその検出効果は大きそうだ。実際、日本人の死亡原因の1位はがんだが、ステージ0で発見できれば、高い生存率であることがわかっている。

また13種類のがん(乳がん、膵臓がん、卵巣がん、前立腺がん、食道がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん、胆道がん、膀胱がん、肺がん、脳腫瘍、肉腫)を網羅的に検出できるため、がんごとの検診も不要になる。ただ、どの臓器のがんを患っているかの特定はできないため、確定するには画像診断などで確認する必要があるという。

東芝は、2014年から国立がん研究センターなどと血液中のマイクロRNAを用いたがん検査の研究を国のプロジェクトとして進めており、2018年度でこのプロジェクトはいったん終了したが、その後も研究を続けていた。開発したキットを使い、過去に採取されたがん患者の血液で精度を検証し、99%の精度で確認できたという。これをもとに今後は東京医科大学などと共同で実証試験を行う方針だ。

東芝は短時間で検出可能

東レなど他社もマイクロアレイでのがん検出技術を開発しているが、東芝の技術は競合他社よりも短時間で検出可能だ。血液採取後に血清化し、マイクロRNAを血清から抽出するのに30分、マイクロRNAに人工配列を付加するのに50分、最後にマイクロRNAチップを小型検査装置に入れて定量検出するのに40分で完了する。

電気的な方法でマイクロRNAを検出しており、他社の光学的な検出方法より機器も小型化しやすいという。橋本研究主幹は「東芝は電機メーカーなので、電機で蓄積した技術が幅広く活用できた」と語る。

東芝は不正会計などで窮地に陥ったことから黒字だった画像診断機器事業を2016年にキヤノンに売却する一方、2019年度からスタートした新たな中期経営計画では、マイクロRNAによるがん検診や重粒子線がん治療装置などの精密医療事業を、リチウムイオン二次電池、パワーエレクトロニクスに並ぶ新規成長分野と表明していた。

東芝が経営危機でもあえて残した精密医療。予防から検診、診断、治療までがん領域の各フェーズで要素技術を保有しており、将来の再生・細胞医療市場の世界的な拡大を虎視眈々と見据えている。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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