アンテキヌスの男たちが迎える壮絶すぎる最期

自分の死と引き換えに「未来」という種を残す

アンテキヌスもネズミと同じ戦略である。

彼らの寿命も短い。アンテキヌスのメスは寿命が2年程度である。オスの寿命はさらに短く、1年に満たないとされている。

彼らの一生は忙しい。

アンテキヌスは生まれて10カ月で成熟し、生殖能力を持つ。つまり、大人になるのだ。

人間が20歳で大人になるとすれば、それまでに240カ月かかっている計算になる。アンテキヌスは、この24倍もの速さで大人になるのだ。

アンテキヌスは冬の終わり頃の2週間程度が繁殖期になる。そして、大人になったアンテキヌスのオスは、メスを見つけては、次々と交尾を繰り返していくのである。

哺乳類のメスは、オスを選り好みする例が多く見られる。1回に産むことのできる子どもの数が限られている哺乳類では、いかに優れたオスの遺伝子を子どもに託すかが重要なのだ。そのため、交尾相手のメスをめぐって、オスどうしが戦い、強いほうのオスだけがメスと交尾をするというルールを持つ動物も少なくない。

ところが不思議なことに、アンテキヌスのメスは、どんなオスでも受け入れるという。おそらくは、それだけ繁殖をし、子孫を残すことが難しいということなのだろう。選り好みをしている余裕がないのだ。

交尾に明け暮れて死ぬ

もちろん、オスのほうもメスを選ぶことはない。手当たり次第に、と言えば言葉は悪いが、オスも出会ったメスと次々に交尾を繰り返していく。

強いオスだけが子孫を残すことができるというルールであれば、オスたちは体を大きくして闘争能力を高めていく。しかし、アンテキヌスにとっては、強いことには何の意味もない。どんなオスでもメスは受け入れてくれるのだから、少しでもたくさんのメスと交尾したオスが、より多くの子孫を残すことができる。そうなれば早い者勝ちだ。アンテキヌスにとっては、他のオスと戦っているような暇はない。

他の動物たちは、ライバルと競い合ってパートナーを選び、甘い鳴き声やスキンシップで愛を育みながら、愛の結晶を宿す。しかし、アンテキヌスのオスは、恋だの愛だの言うことは一切なく、ただ交尾相手を探しては交尾をし、また次の交尾相手を探すことを繰り返す。

それも無理のない話だろう。何しろ、アンテキヌスに許された繁殖期間はわずか2週間しかない。それが、アンテキヌスにとって生涯で1度にして最後のチャンスである。この期間を過ぎれば、オスは寿命が尽きてしまう。そのため、アンテキヌスのオスは、この間、不眠不休でメスを探し続け、ひたすら交尾を行っていくのである。

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