アンテキヌスの男たちが迎える壮絶すぎる最期 自分の死と引き換えに「未来」という種を残す

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生物学的には、彼らこそが、男の中の男なのだ(写真:quentinjlang/iStock)
生きものたちは、晩年をどう生き、どのようにこの世を去るのだろう──。
老体に鞭打って花の蜜を集めるミツバチ、成虫としては1時間しか生きられないカゲロウなど生きものたちの奮闘と哀切を描いた『生き物の死にざま』から、アンテキヌスの章を抜粋する。

アンテキヌスはオーストラリアの有袋類

彼らは何のために生きているのだろう?

アンテキヌスという動物を知っているだろうか。

アンテキヌスは体長が10センチメートル程度しかない。彼らは小さなネズミのような有袋(ゆうたい)類である。有袋類というのは、カンガルーのように袋の中で子どもを育てる仲間だ。

有袋類は未熟な胎児を産み、袋の中で子どもを育てる。一方、一般的な哺乳(ほにゅう)類は、有胎盤類と呼ばれている。有胎盤類は胎盤が発達しており、母親のお腹の中で子どもを十分な大きさにまで育てることができるのである。

有袋類と有胎盤類とは、もともと共通の祖先を持つが、1億2500万年以上前に枝分かれして、それぞれの進化を遂げたと言われている。

世界では有胎盤類が多様な環境に適応して、多様な進化を遂げたが、オーストラリアでは、有袋類がさまざまな進化を遂げた。

たとえば、有胎盤類のネコのように、有袋類ではフクロネコが進化した。また、有胎盤類のオオカミに対して、有袋類のフクロオオカミ、有胎盤類のモグラに対して、有胎類のフクロモグラ、有胎盤類のモモンガに対して、有袋類のフクロモモンガというように、その進化はよく似ている。

有胎盤類も有袋類も環境に適応してよく似た進化をしているのである。ちなみに有袋類のカンガルーは、有胎盤類ではシカ、有袋類のコアラは有胎盤類のナマケモノに相当すると考えられている。

アンテキヌスは、有胎盤類ではネズミによく似ている。

ネズミは弱い生き物で、さまざまな動物たちの餌にされる。そのため、ネズミは1年程度の短い寿命の間に、たくさんの子どもを産んで生き残るという戦略を選んでいる。

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