法曹界きっての「IT革命児」がはまった深い谷 司法制度改革が生み出した「士業」のひずみ

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司法書士から事件を引き継いでいた酒井氏らが弁護士会から懲戒審査にかけられたのには、弁護士と司法書士の食いぶち争いが背景にありそうだ。

酒井氏は「今必要なことは、司法書士から弁護士がどのように事件を引き継げば、依頼者に余計な負担をかけないワンストップサービスが実現できるか、ルールやガイドライン制定のための議論をすることだ」と言う。が、両者が睨み合っている状況下で、引き継ぎに関する議論はほとんど進捗していないのが実情だ。

「IT革命児」への嫌悪感も?

酒井氏の代理人の1人で元参議院議員の丸山和也弁護士は、酒井氏らに「非弁提携」の疑いがかけられていることは「筋が違う」と言う。

「かつて、事件を掘り起こしては弁護士に売りつけ、紹介料を得ようとする事件屋やブローカーが跋扈した時代があった。これを阻止するために弁護士会は、弁護士がこうした輩たちと手を組むのを『非弁提携』として禁じた。今回、酒井弁護士らがやってきたことを昔と同じくくりで『非弁提携』とするのは筋違いだろう」

堅いイメージの法曹界にあって、酒井氏は異色の存在だ。弁護士登録をして3年後の2005年、大学時代のゼミの先輩だった元榮太一郎氏(現在は参議院議員)から弁護士の検索や弁護士費用の見積もり、法律相談ができるウェブサイトをつくろうと誘われ、24時間365日、どこからでもアクセスできるウェブサイト「弁護士ドットコム」を立ち上げた。

同サイトからはすでに身を引いている酒井氏だが、「法曹界のIT革命児」と称されるのは、ネット広告を駆使して多数の依頼者を全国からかき集める手法を確立してきたからだ。そうした新手法を嫌悪する旧世代の弁護士はまだまだ多く、「酒井バッシング」を招いているのはこうした新旧世代間対立もあるのではないか、と丸山氏はみる。

東京弁護士会の懲戒委員会は、年内にも酒井氏らの懲戒の是非を判断する見通しだ。

野中 大樹 東洋経済 記者

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のなか だいき / Daiki Nonaka

熊本県生まれ。週刊誌記者を経て2018年に東洋経済新報社入社。週刊東洋経済編集部。

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