サントリーがペットボトル回収を急ぐ深刻背景 大阪市の家庭ゴミを直接回収する実験開始
こうした目標を達成するうえでの課題は、資源として利用できる状態のペットボトルをどのようにして集めるかだ。使用済みペットボトルは、家庭から出るものとコンビニや自販機など事業系から出るものの2種類がある。前者の多くは家庭で洗浄・分別され、比較的きれいなことが多く、「資源としての価値は事業系ゴミの2倍ほど」(サントリーの孫会社で、自販機管理を行うジャパンビバレッジ環境部の梶原章部長)という。
ただ家庭ゴミは、自治体で回収・分別が行われた後、競売にかけられるため、メーカーが一定量を安定的に確保することが難しい。サントリーが今回、使用済みペットボトルの直接回収に乗り出したのは、家庭から出るペットボトルを安定的に得るためにほかならない。
異物混入が後を絶たない自販機横のゴミ箱
飲料メーカーの頭を悩ませているもう1つの課題が、自動販売機の隣に設置されている「空容器回収ボックス」だ。本来は販売したペットボトルを資源として回収する目的で設置されているが、異物の混入が後を絶たない。
「最近はコンビニも店舗の中にゴミ箱を置くようになり、テロ対策で公園のゴミ箱もなくなった。そのため、自販機横の回収ボックスにゴミが捨てられている。タピオカのカップが投入口をふさいで、本来入れるべきものが入れられないケースも多々ある」(ジャパンビバレッジの梶原氏)。
自販機横の回収ボックスは、メーカーなどの飲料団体が自主的に設置しているものだ。だが、その中に入れられたゴミの回収にかかる負担は大きい。市町村が設置する町中のゴミ箱が減った背景について、ある飲料メーカー関係者は「正直に言って、ゴミ箱を設置するのは自治体にとってコスト。テロ対策というが、(ゴミ箱が撤去された)きっかけは1995年の地下鉄サリン事件だと思う。これを機に、ゴミ箱を撤去する自治体が出てきた」と話す。町中にゴミを捨てる場所がなくなった結果、自販機横の回収ボックスにさまざまなゴミが増えることとなった。
異物とともに捨てられ、汚れたペットボトルは、飲料用の容器として再生することは衛生上難しい。サントリーによると、ほかのゴミによって汚れていたり、タバコなど異物が入っているペットボトルは焼却するしかないという。
飲料メーカーでつくる全国清涼飲料連合会の甲斐喜代美氏は「2019年4月から、ペットボトル以外のものを入れないように啓発するステッカーを貼っているが、効果が見られない。モラルの問題にも取り組む必要がある」と嘆く。
食品業界ではプラスチックから紙に包装素材を変えたり、生分解性プラスチックを導入する動きが進んでいる。ただ、環境省環境再生・資源循環局の井関勇一郎係長は「3R(リデュース、リユース、リサイクル)の順番が大事。そもそもの利用量を減らすことが大原則だからだ。そのため、生分解性などのリサイクルは最後の手段」と、強調する。
環境対策への取り組みは企業努力だけでは限界があり、消費者の理解が不可欠だ。そういった意味で、サントリーなど他社に先駆けて対策を強化する企業は、消費者にどこまで働き掛けられるかも求められている。
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