大学院卒でも年収180万円からスタート。超シビアな“ハリウッド給料事情”《ハリウッド・フィルムスクール研修記8》

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 「2年間で4本」という話を他のアメリカの学生にすると、「そんなに作るのか?」と驚かれる一方、業界で活躍する日本人ディレクターからは「4本で才能を評価されるなんてキツイね」と真逆の反応。

映像業界だけでなく、これは他の業界にも言えること。余裕がある企業に限った話かもしれませんが、新卒で採った社員を大切に育て、短期スパンで能力を判断しないのは日本企業の魅力です。

クラスメートを見ていても、95%の留学生は自国の映画産業には芸術的にも金銭的にも魅力を感じず、ハリウッドに来なければまともな映画を作ることも、食っていくこともできません。特に、オーストラリアのような英語圏では作品を作ってもハリウッドとの差別化ができませんので、国産映画の市場は無いに等しいのです。

そんな中で、世界第2位の映画市場を有し、その半分以上のシェアを自国で生産している日本は映画製作者にとって、実はチャンスに恵まれた環境なのです。

私のようにキャリアチェンジ(広告営業→映像プロデュース)を目指す者にはフィルムスクールは一つのきっかけになりますし、貴重な経験ができているのは確かです。ただし、現在既に日本の映像業界で働かれている方、そしてこれから映像業界を目指す方々は、自虐的になるのではなく、周囲を見回して、日本の良さを再評価されてみてはいかがでしょうか。


木野下 有市 (きのした・ゆういち)
 1980 年生まれ。慶応義塾大学総合政策学部卒業後、広告会社にて大手飲料・製薬メーカーの広告キャンペーン等を担当。2008 年8 月よりアメリカン・フィルム・インスティテュート(AFI/米国映画協会)大学院にて映画プロデュースを専攻。ギャガ会長・東京国際映画祭チェアマン依田巽氏の寄付で設立されたAFIの奨学金を受け、芸術学修士の取得を目指して勉強中。

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