大学院卒でも年収180万円からスタート。超シビアな“ハリウッド給料事情”《ハリウッド・フィルムスクール研修記8》
「スタジオ・エグゼクティブとは有能で猛烈に働く人種であるが、野球チームの監督同様、 "自分たちは遅かれ早かれいつか解雇される" という恐怖と共に毎朝目覚める。しかも現代においては、彼らは"今"結果を出さなければ、クビになるのである」
ヒットが確実視されるシリーズ物ばかりに偏るのは彼らの保身策。保守的になるハリウッドの背景にはこうした人事制度があるのです。
日本 or ハリウッド?
こんな話を授業で聞いていると、日本の映画製作者はまだ恵まれている、という気持ちにさえなります。もちろん、中小プロダクションの労働環境はハリウッド以下でしょう。私の妻は独身時代、日本の小さな映画・テレビプロダクションで働いていました。1週間家に帰れず机の下で寝るような生活を続けた結果、胃潰瘍で血を吐いて会社を辞めました。
しかし、いまや日本映画製作の中心となっている大手テレビ局では新入社員でも、ハリウッドのVice President並みの高給を手にすることができます。大手の映像製作会社ではディレクターやプロデューサーの卵たちが給料をもらいながら先輩の下でイロハを学ぶシステムが確立されています。
ロサンゼルスで映画を学ぶ大学生たちから、「卒業後、アメリカで働くのと日本に帰るのとどちらが良いと思うか」という質問をしばしば受けますが、特に監督志望の学生には窮せず「日本」と答えています。
AFIは、アメリカのフィルムスクールで最多の2年間で4本のショートフィルム製作が課されています。キラリと光る作品を作ることができれば誘いの声もかかりますが、4本で結果を出さなければ厳しい将来が待ち構えています。
卒業後には学校からの支援(撮影機材、保険等)もなくなり、カメラマンや美術デザイナーとして無料で手伝ってくれるクラスメートも周りにいなくなります。