金融版「カカクコム」誕生に業界が怯える事情

2021年夏にも新金融仲介サービスが始まる

実際、インターネットを介した金融サービスのニーズは高い。総務省の『情報通信白書』(平成29年版)によると、ネット上で個人向け資産運用サービスを利用したいと答えた人は26.3%にのぼるものの、実際の利用率は3.6%にとどまる。アメリカの利用率が27.8%、イギリスのそれが12.8%となっているのに比べて低い水準だ。日本にはネットを介した金融サービスの需要はあるものの、それを満たすサービスの整備が遅れているということだろう。

しかし、新しい金融仲介サービス制度については慎重な意見もある。日本証券業協会の鈴木茂晴会長(大和証券グループ本社名誉顧問)は東洋経済の取材に対し、「新たな仲介業に期待しているが、証券のようなリスク商品を販売する際には投資家保護の観点から、制度整備の充実が重要である」とコメントした。

【2019年12月18日12時34分追記】初出時の鈴木茂晴会長の肩書きが誤っていました。表記のように修正いたします。

いわば、所属制という手綱を証券会社が握っていることによって、金融商品仲介業者の「暴走」が防止されてきたという日証協。仮に所属制がなくなるのであれば、新しい金融仲介サービスの担い手にも既存の金融商品仲介業者と同じ水準でルールを守ってもらえる仕組み作りが必要だと訴える。

12月10日の金融庁の会議でも、生命保険協会の委員から「保険商品の選択に当たっては、保障内容や保険料が大事。手数料を開示することで、手数料が安い商品がいい商品であるという誤解を招き、適切な商品選びのさまたげになるかもしれない」という声が出た。証券や保険業界からは新サービスに慎重な声が聞こえてくるのはなぜなのか。

既存のビジネスモデルを変える起爆剤に

家電量販店やカカクコムなどのウェブサイトが台頭したことで、家電メーカー間や量販店間の価格競争が活性化。メーカーが決めた「定価」で販売されることは少なくなった。松下電器(パナソニック)や東芝などの大手電機メーカーの看板を掲げていた、地元の電気店から家電製品を購入する人はもはやほとんどいない。

他方、金融業界ではネット銀行やオンライン証券が普及してきたものの、住宅ローンや生命保険の契約、定年後の資産運用などで対面チャネルが残っている。日証協や生命保険文化センターの調査によれば、2018年時点で証券会社との主な取引方法は52.8%の人が「店頭営業員への電話、店舗での対面」と回答し、生命保険も53.7%の人が保険会社の営業職員を通じて加入している。

「日本の金融は顧客本位など一生懸命やっているが、いい商品が売れて、外貨建て保険や毎月分配型の投資信託など(そうでないものが)淘汰されていくというメカニズムが弱い。商品の価格と性能による競争がうまく働かず、(販売)チャネルの勝負になっている」というのが金融庁の問題意識だ。

既存の販売網を維持したい大手金融機関にとって、今回の新しい仲介サービスはビジネスモデルを大きく変える破壊力を持つ存在になりうる。しかし見方を変えれば、金融サービスの間口を広げ、これまで投資や資産形成と縁のなかった消費者を取り込むきっかけにもなる。

金融庁が説得に動いたという事情もあってか、12月10日の金融庁の会議ではほとんど異論が出ず、2019年内にも報告書がまとまる見通しだ。順調にすすめば、2020年春の通常国会に法案が提出され、2021年夏にも施行される。

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