ガソリンの暫定税率廃止は「環境」「分権」と整合性をとれ
鳩山由紀夫政権下で初めての2010年度予算編成と10年度税制改正作業において、論争の最大の火種になりそうなのが、揮発油税などの暫定税率廃止である。
鳩山政権は、民主党のマニフェストの目玉である暫定税率廃止を来年4月に断行する考えだ。これによって、ガソリンは1リットル当たり約25円下がり、10年度の税収は約2・5兆円も落ち込む。
2・5兆円の穴埋めは可能か
暫定税率が廃止されるのは、ガソリンに課税される“ガソリン税”(国税の揮発油税と国から地方に譲与される地方揮発油税の通称)のほか、軽油に課税される軽油引取税(地方税)、車両に課税される自動車重量税(国税、一部は地方に譲与)と自動車取得税(地方税)だ。これらの税金は主に道路の建設、維持・管理のための特定財源として、1970年代以降、本則税率に上乗せして暫定税率が課されてきた。
これにタクシー燃料などのLPG(液化石油ガス)に課税される石油ガス税(国税、本則税率のみ)を加えた道路特定財源が、09年度からは一般財源化され、道路整備以外にも使えるようになった。一般財源化されたのだから道路整備のための暫定税率は廃止する、というのが民主党の言い分だ。
暫定税率を廃止することで、プラスの面もある。景気を浮揚させる効果が期待できるからだ。ただ、その恩恵は自動車利用者、特に自動車依存度の高い地方の住民や特定の業界に偏ってしまう点は否めない。
一方、暫定税率廃止によるマイナスの影響は大きい。
第一に、明らかに地球温暖化対策と矛盾することだ。民主党は、温室効果ガスを2020年に1990年比で25%削減する目標を掲げる。NGO(非政府組織)である「環境・持続社会」研究センターの足立治郎事務局長は、「民主党の政策は筋が通っていない。暫定税率を廃止するなら、それを上回る税率でCO2排出に課税する炭素税を導入すべきだ」と主張する。
民主党のマニフェストにも、将来の地球温暖化対策税(仮称)導入が明記されており、一部には暫定税率廃止分を温暖化対策税に振り替える案も浮上している。だが、まだ議論は進んでいないようだ。