ガソリンの暫定税率廃止は「環境」「分権」と整合性をとれ

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第二は、財政面への悪影響である。藤井裕久財務大臣によれば、10年度予算編成において、暫定税率廃止による約2・5兆円の税収減は、無駄な公共事業を削減することで穴埋めしたいという。それが実現できればいいが、もし赤字国債を増発して賄うなら、将来世代にツケを回して、現在の自動車利用者が恩恵を受けるという歪んだ構図になる。

地方財政にも悪影響は避けられない。約2・5兆円の税収減のうち、地方税および地方譲与分は8100億円。鳩山政権は、地方分権も重要政策として取り組む考えを示しているが、財源を与えなければ地方分権は成り立たない。暫定税率廃止は、地方の貴重な財源を奪ってしまい、分権政策とも逆行する。

そこで提案したいのは、暫定税率を廃止する場合、化石燃料への課税であるガソリン税と軽油引取税については、暫定税率分と引き換えに「環境税(炭素税)」を新たに導入することだ。しかも、地方財政の苦しい現状や分権政策との整合性を考慮し、新税は地方税にすべきである。

自動車重量税と自動車取得税に関しては、化石燃料への課税ではないため、環境税導入には否定的な意見が多い。すでに環境税を導入している欧州諸国でも、化石燃料や電気を含むエネルギーへの課税が基本だ。日本でも、化石燃料のCO2排出量に応じた炭素税方式の環境税導入なら論理は成り立つし、今回は税負担が増えないので、導入しやすい。こうすることで、重量税と取得税の暫定税率を廃止しても、地方の財源は差し引きで1兆円近い増加になる。

エネルギー税制全体を見直せ

具体的な制度設計は慎重に詰めなければならないが、ガソリン税なら、暫定税率の1リットル約25円に見合う分を、地方税としての新税に置き換える(本則税率の28・7円はガソリン税のまま)。税目は揮発油税、地方揮発油税、新税(環境税)の三つに分かれる。暫定税率が約17円とガソリン税より低率の軽油引取税は、CO2排出量を基準にすれば新税の税率をガソリン並みに上げるべきだが、当面は暫定税率見合いでもよい。

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