まだ22歳の学生社長が得た、23億円の「使い道」 あの橋本環奈をCMに使うバイトアプリの雄

拡大
縮小

自作したアプリを投資家に見せに行くと、反応は上々で、2018年4月には1200万円の調達が決定。本格的な開発に取りかかり、8月にはリリースにこぎ着け、追加で3400万円を調達した。両親に報告すると、「どんな貸金業から借りたんだ?」と驚愕し、ベンチャーキャピタルとは何かという説明に追われた。

親は納得してくれたものの、「会社が成長しなかったら就職するように」とクギを刺されてしまった。とはいえ、その4カ月後には3億円を追加調達しているので、確信犯である。就職活動という退路を断ち、事業拡大へのめり込んでいった。

タイミーの主な利用者は学生、主婦、フリーターとなっている(提供:タイミー)

タイミーがブレークする大きな転機となったのは、2019年6月に給与の即日支払いでセブン銀行と業務提携を発表したことだ。このタイミングで、外食大手14社の一斉導入が決まり、メディアでも大きく取り上げられた。10月には、JR東日本スタートアップと資本業務提携を締結するなど、次々と大企業とタッグを組んでいる。

まだ若いスタートアップ企業にもかかわらず、大企業と組める背景には、独自のビジネスモデルがある。

飲食店は初期導入費用ゼロでタイミーを導入できる。その代わり、利用した場合は手数料30%を支払う必要があるが、「求人広告を出しても人が集まらなかったり、すぐに離職されることを考えると、決して高くはない」(小川社長)。優秀な人材にタイミーを通して出会った場合、正式なアルバイト採用のオファーを出すこともできる。

8社のインターンで続けた武者修行

タイミーを利用する業界の6割は、深刻な人手不足に悩む外食業界が占めており、残りが小売りや物流、アパレル、イベント業界となっている。利用者は学生や主婦、フリーターが対象で、働くたびに勤務先から評価がつけられる仕組みを取り入れている。小川社長は「今後は能力の高い人に融資できるなど、タイミーのデータを用いた信用経済も作りたい」と意気込む。

右肩上がりの成長は、決して運だけで手に入れたものではない。リリース直後は「個人経営の飲食店やコンビニのフランチャイズオーナーへ飛び込み営業をかけていた」(小川社長)。前のめりな行動に移せたのは、リクルートやサイバーエージェントなど8社で、インターンシップの経験を積んできたことも大きい。

中でもリクルートで経験した6カ月間のインターンは強烈で、「1日8時間、営業電話をかけ続けるというプログラムが逃げ出したくなるほど、つらかった」。このときの経験がタイミーでも生かされ、自らユーザーの声を拾いながら、アプリの改善を重ねることにつながったという。

次ページ曾祖父と福沢諭吉の意外な関係とは?
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT