なお、政府支出は、2013年度同プラス3.2%、2014年度同プラス2.1%と高い伸びだったが、その後28兆円規模の経済対策が打ち出されたが2015〜2018年度平均でプラス1%前後に抑制され、歳出の名目GDP(国内総生産)比率が低下する緊縮財政政策が続いた。
こうした過去の経緯を踏まえると、今回の対策が日本の経済成長率を押し上げる効果はマクロ的にはほとんど観測されないとみられる。表面上は大きい規模だが、実際に増える政府による歳出は極めて限定的に止まり、経済安定化政策として十分機能しない大きな問題があるだろう。
仮に、今回の経済対策で追加的に大規模な歳出拡大につながれば、政府による国債発行が増える。国債発行が増え金利上昇圧力が高まれば、現在の日本銀行の政策フレームワークでは日銀による国債発行購入が増える。そして、金融緩和が強化され、経済成長率を高める効果が顕在化するだろう。ただ、少額の歳出増にとどまるため国債発行はわずかしか増えず、一方で国債が償還される分を勘案すると、2020年度の国債残高はむしろ減少するとみられる。このため、日銀による国債購入が増えずに、金融緩和の強化は期待できない。
財政投融資は経済全体の安定化策として機能せず
さらに、今回の経済対策の問題は、13兆円の財政支出のうち財政投融資経由での歳出が3兆8000億円含まれている点である。財政投融資による歳出拡大は、効果が不透明でその妥当性が検証されづらい。どのような分野で歳出が増えるか不透明だが、政府の旗振りで特定産業に対する補助金が増える可能性がある。こうした歳出拡大では、新たな既得権益の関係者にのみ恩恵がおよび、経済全体の安定化として機能しないだろう。
まとめると、今回の経済対策が2020年度の日本経済の成長率を高める効果はかなり低く、消費増税による実質所得の目減りによって2020年度はゼロ近傍の低成長となるだろう。このため、2020年も日本株のパフォーマンスは、米欧などを下回るとみている。日本株の上昇が続くか否かは、アメリカの経済、株式市場次第だろう。
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