既得権と独占を壊せ!自由な社会の作り方 若き天才経済学者が「ラディカル」に提言

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仮に税率が10%だった場合に、COSTがどう機能するのかを想像してみよう。あなたが現在所有している土地の価格を1000万円と申告すると、毎年政府に支払う税金はその10%の100万円となる。申告額は自分で決めることができるので、たとえば価格を800万円に引き下げれば、税金は2割も安い80万円で済む。

こう考えて、土地の評価額を過小申告したくなるかもしれない。しかし、もし800万円よりも高い価格を付ける買い手が現れた場合には、土地を手放さなければならない点に注意が必要だ。

しかもその際に受け取ることができるのは、自分自身が設定した金額、つまり800万円にすぎない。あなたの本当の土地評価額が1000万円だったとすると、差し引き200万円も損をしてしまうのである。

このように、COSTにおいて自己申告額を下げると納税額を減らすことができる一方で、望まない売却を強いられるリスクが増える。このトレードオフによって、財産の所有者に正しい評価額を自己申告するようなインセンティブが芽生える、というのがCOSTの肝である。

現代によみがえるジョージ主義やハーバーガー税

実は、COSTのような仕組みの発想自体は、著者たちのオリジナルというわけではない。シカゴ大学の経済学者アーノルド・ハーバーガーが、固定資産税の新たな徴税法として同様の税制を1960年代に提唱しており、彼の名前をとって「ハーバーガー税」とも呼ばれている。

またその源流は、19世紀のアメリカの政治経済学者ヘンリー・ジョージの土地税にまで遡ることができる。ただし、適切に設計されCOSTを通じて、所有者にきちんと正直申告のインセンティブを与えることができることや、配分効率性の改善がそれによって損なわれる投資効率性と比べて十分に大きいことなどを示している点は、著者たち(特にグレン・ワイル氏と、別論文での彼の共同研究者)の大きな貢献だ。

整理すると、大胆な構想と洗練された最先端の学術研究によって、本書はジョージ主義やハーバーガー税を現代によみがえらせ、土地をはじめとするさまざまな財産に共同所有への道筋を切り拓いた、といえる。

財産の私的所有は、確かに著者たちが主張するように「独占問題」を引き起こし、現在の所有者よりも高い金額でこの財産を評価する潜在的な買い手に所有権が移転しにくくなる、という配分の非効率性を引き起こす。
ただし、この非効率性は悪い面ばかりとは限らないのではないだろうか。非効率性の正の側面として、3つの可能性に思い至ったので書き留めておきたい。

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