既得権と独占を壊せ!自由な社会の作り方 若き天才経済学者が「ラディカル」に提言

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ここで登場する「2乗する」というルールは、単なる著者たちの思い付き、というわけではもちろんない。現在までに購入した票数と追加的に1票を買い足すために必要なボイスクレジットが比例的な関係になる、という二次関数の性質がカギを握っているのだ。

エリック・A・ポズナー/シカゴ大学ロースクールのカークランド・アンド・エリス特別功労教授。『The Twilight of Human Rights Law』(未訳)、『法と社会規範』(太田勝造監訳、藤岡大助[ほか]訳、木鐸社)など著書多数。シカゴ在住(写真:プリンストン大学出版局)

そのうえで著者たちは、一定の条件の下で、QVによって公共財の最適供給が実現できることを示している。独創的なアイデアをきちんと先端研究によって補完する、という組み合わせは他の章にも通底する本書の大きな魅力である。

さて、ここからは第1章「財産は独占である」の中身と、その評価について述べたい。本書の中でも最もラディカルなこの章で著者たちが改革の矛先を向けるのは、財産の私的所有に関するルールである。

私有財産は本質的に独占的であるため廃止されるべきだ、と彼らは主張する。言うまでもなく、財産権や所有権は資本主義を根本から支える制度のひとつだ。財産を排他的に使用する権利が所有者に認められているからこそ、売買や交換を通じた幅広い取引が可能になる。

所有者が変わることによって、財産はより低い評価額の持ち主からより高い評価額の買い手へと渡っていくだろう(配分効率性)。さらに、財産を使って得られる利益が所有者のものになるからこそ、財産を有効活用するインセンティブも生まれる(投資効率性)。

私有財産制度がもたらす問題

著者たちは、現状の私有財産制度は、投資効率性においては優れているものの配分効率性を大きく損なう仕組みであると警告している。私的所有を認められた所有者は、その財産を「使用する権利」だけでなく、他者による所有を「排除する権利」まで持つため、独占者のように振る舞ってしまうからだ。

この「独占問題」によって、経済的な価値を高めるような所有権の移転が阻まれてしまう危険性があるという。

一部の地主が土地を手放さない、あるいは売却価格をつり上げようとすることによって、区画整理が必要な新たな事業計画が一向に進まない、といった事態を想定するとわかりやすいだろう。

代案として著者たちが提案するのは、「共同所有自己申告税」(COST)という独創的な課税制度だ。COSTは、1.資産評価額の自己申告、2.自己申告額に基づく資産課税、3.財産の共同所有、という3つの要素からなる。具体的には、次のような仕組みとなっている。

1. 現在保有している財産の価格を自ら決める。
2. その価格に対して一定の税率分を課税する。
3. より高い価格の買い手が現れた場合には、
3─i. 1の金額が現在の所有者に対して支払われ、
3─ⅱ. その買い手へと所有権が自動的に移転する。
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