既得権と独占を壊せ!自由な社会の作り方

若き天才経済学者が「ラディカル」に提言

「ラディカル」(Radical)という単語は、「過激な・急進的な」という意味と「根本的な・徹底的な」という意味の、2通りで用いられる。本書『ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀』は、まさに両方のラディカルさを体現した「過激かつ根本的な市場改革の書」である。

E・グレン・ワイル/マイクロソフト首席研究員で、イェール大学における経済学と法学の客員上級研究員。ボストン在住(写真:プリンストン大学出版局)

市場が他の制度――たとえば中央集権的な計画経済――と比べて特に優れているのは、境遇が異なる多様な人々の好みや思惑が交錯するこの複雑な社会において、うまく競争を促すことができる点である。

市場はその存在自体がただちに善というわけではなく、あくまで良質な競争をもたらすという機能を果たしてこそ評価されるべきだ。

もしもその機能が果たされていないのであれば、市場のルールを作り替える必要がある。今までのルールを前提に市場を礼賛する(=市場原理主義)のではなく、損なわれた市場の機能を回復するために、過激で根本的なルール改革を目指さなければならない(=市場急進主義)。本書の立場は、このように整理できるだろう。

現代世界が直面する問題とその解決策

では、著者たちが提案する過激な改革とは、いったいどのようなものなのか? 本論にあたる第1章から第5章までの各章で、私有財産、投票制度、移民管理、企業統治、データ所有について、現状および現行制度の問題点がそれぞれ整理され、著者たちの独創的な代替案が提示されている。

どの章もそれだけで1冊の専門書になってもおかしくないくらい内容が濃く、驚かれた読者も多いに違いない。第3章から第5章では、世界が現在進行形で抱える深刻な社会・経済問題に対する処方箋が示されており、移民、ガバナンス、データ独占などの現代的な問題に関心のある方は必読だ。

本書の中心となる第1章と第2章は、資本主義および民主主義の大前提を揺るがし、思考の大転換を迫るようなラディカルな提案を読者へと突きつける。

たとえば、第2章「ラディカル・デモクラシー」では、民主主義の大原則である1人1票というルールに改革のメスが入る。具体的には、ボイスクレジットという(仮想的な)予算を各有権者に与えたうえで、それを使って票を買うことを許すという提案だ。

これによって、有権者は自分にとってより重要な問題により多くの票を投票することができるようになる。その際に、1票なら1クレジット、2票なら4クレジット、3票なら9クレジット……という具合に、票数の2乗分のボイスクレジットを支払う仕組みを著者たちは提唱し、「二次の投票」(QV)と名付けている。

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