孤立する高齢者が人間らしく生きるための支え 居場所が自然と生まれる仕組みが必要だ

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井手:そういう居場所づくり、とても重要だと思います。

今や家族というものが以前ほど機能しなくなっていて、高齢者が孤立するケースが増えていますよね。そんななかで、お年寄りが人間らしく生きていくにはどうすればいいのか、真剣に考えていかないと本当にまずいと思うんです。

いまこそ原点に立ち返るべき

井手:そもそも人間は、関係のなかで生きていく存在です。この世に生まれてきて、親をはじめとする多くの人のサポートのもとで成長し、やがて大人になって、愛する人と生活を共にする。だからこそ、年を取ったときに、その人にとって、なじみ深い場所で死んでいく権利が人間にはあると思うんです。

『ソーシャルワーカー―「身近」を革命する人たち』(ちくま新書)書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

僕たちが、ソーシャルワーカーの仲間たちと一緒に作った新書のサブタイトルは「『身近』を革命する人たち」となっています。革命というと、暴力によって世の中を転覆させるといった怖いイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、レボリューションの語源は、ラテン語のrevolvere(巻き戻す)です。原点に立ち返るということなんですね。

今日のお話で言えば、「今日よりいい明日」を夢見る自由が当たり前の権利として認められること、人間らしく生きていくという当然の権利が認められること、それこそが、立ち返るべき原点だと思うんです。

佐々木さんがなさっている在宅医療も、ソーシャルワーカーと同じように、人が幸せになれる環境をつくっていこうとする「身近革命」そのものだと思いました。同じ未来を見つめる仲間があちこちにいる。こんなに愉快なことはありません。

井手 英策 慶應義塾大学経済学部教授

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いで えいさく / Eisaku Ide

1972年生まれ。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。日本銀行金融研究所、東北学院大学、横浜国立大学を経て、現在、慶應義塾大学経済学部教授。専門は財政社会学。総務省、全国知事会、全国市長会、日本医師会、連合総研等の各種委員のほか、小田原市生活保護行政のあり方検討会座長、朝日新聞論壇委員、毎日新聞時論フォーラム委員なども歴任。著書に『幸福の増税論 財政はだれのために』(岩波新書)、『いまこそ税と社会保障の話をしよう!』『18歳からの格差論』(東洋経済新報社)ほか多数。2015年大佛次郎論壇賞、2016年慶應義塾賞を受賞。

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佐々木 淳 医療法人社団 悠翔会 理事長

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ささき じゅん / Jun Sasaki

1973年京都市生まれ。1998年筑波大学医学専門学群を卒業後、社会福祉法人三井記念病院に内科研修医として入職。消化器内科に進み、おもに肝腫瘍のラジオ波焼灼療法などに関わる。2004年東京大学大学院医学系研究科博士課程に進学。大学院在学中のアルバイトで在宅医療に出会う。「人は病気が治らなくても、幸せに生きていける」という事実に衝撃を受け、在宅医療にのめり込む。2006年大学院を退学し在宅療養支援診療所を開設。2008年法人化し、現職。2021年 内閣府規制改革推進会議専門委員。 現在、首都圏ならびに沖縄県(南風原町)に全18クリニックを展開。約6000名の在宅患者さんへ24時間対応の在宅総合診療を行なっている。

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