定年間際に貯金ゼロでも安心老後をすごす方法 サラリーマンは「2つの資本」で何とかなる

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このようにサラリーマンの金融資本には、①公的年金という保険制度による老後の生活保障のお金、②会社から給料の後払い分として定年後に支払われるお金、そして③自分で蓄えたお金――の3種類があるのです。「定年時に貯蓄がほとんどない」という人は、3種類のうち③がほとんどない、ということにすぎません。したがって、貯蓄がほとんどなくても焦ったりせず、まずは①の公的年金と②の退職給付制度でどれくらいの収入を得られるかを把握することです。

ところが、多くの人は、これらの数字をきちんと把握していません。私は、老後のライフプランに関するセミナーを年間140回以上行っていますが、自分が受け取れる公的年金額や、会社の退職給付制度を十分理解している参加者はほとんどいません。人間は、わからないことに不安を感じるものです。老後のお金についても、これらのことがよくわかっていないから不安が増幅されるのです。

そうなると、金融機関の言いなりになって不要な保険商品を契約したりリスクの高い金融商品を買ったりしがちです。現に「老後2000万円問題」が取り沙汰された今年6月以降、金融機関に口座を開設したり、投資を始めたりする人が増えたという話を聞きます。

私は、老後の生活にいくら必要かという以前に、不安感をあおられて変な金融商品を買ってしまったり、投資にお金をつぎ込んで失敗したりする、いわば二次災害の問題を強く懸念しています。

60歳以降も「人的資本」を活用し、稼ぎを得ていく

人的資本についても、60歳で定年になったからといって「ゼロ」になるわけではありません。

総務省統計局の「労働力調査」(2018年)によると、60~64歳で働いている男性は81.1%、65歳以上でも33.2%となっています。2013年に高年齢者雇用安定法が改正され、企業に対し、希望する人全員を65歳まで雇用することが義務づけられました。それ以降、働きたい人のほとんどは60歳以降も働いています。

多くは再雇用ですから現役時代の収入に比べれば大幅に下がっているでしょうが、仮に年収200万円(月給約17万円)で働いたとしても、5年で1000万円となります。60歳時点で貯蓄がゼロだとしても、人的資本の価値は決してゼロではないのです。

「定年で収入がなくなるのに、貯金がない。もう生活していけない」などと老後を心配しすぎたり、諦めたりするのは早計です。貯金以外の金融資産となる「公的年金制度や退職給付制度」を正しく把握しておくこと。そして、人的資本を活用して「60歳以降も元気である限りは働く」というやり方を再考してみることが大事ではないでしょうか。

大江 英樹 経済コラムニスト、オフィス・リベルタス代表

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おおえ ひでき / Hideki Oe

大手証券会社で25年間にわたって個人の資産運用業務に従事。確定拠出年金ビジネスに携わってきた業界の草分け的存在。日本での導入第1号であるすかいらーくや、トヨタ自動車などの導入にあたりコンサルティングを担当。2003年から大手証券グループの確定拠出年金部長などを務める。独立後は「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるよう支援する」という信念のもと、経済やおカネの知識を伝える活動を行う。CFP、日本証券アナリスト協会検定会員。主な著書に『自分で年金をつくる最高の方法』(日本地域社会研究所)、『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)などがある。

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