中国の宴会は、戦いの場だ  宴会を制する者、中国ビジネスを制す① 

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もちろん、宴会を通じて丸裸にされるのは、主催者のナンバー2側の力量だけではない。列席するあなたの会話を聞けば、知識の広さや物の考え方、そしてあなたの人柄が相手には手に取るように見えてくるものだ。

ヒューマンスキルが尊重される中国

昔は「お酒がよく飲めない人は、中国ビジネスには向いてない」と言われたものだ。だが、これはウソだ。これは、一昔前の中国とのビジネスでは、宴会の席で何となく決まることがあったので、誰が言い出したのかは知らないが、中国ビジネスには今でもお酒と宴会がつきものだと言われるのである(お酒の話は、またの機会にゆっくり書きたいと思う)。

日本でもそうだが、私に言わせれば、人材の能力とは「ビジネススキル」「ヒューマンスキル」「マネジメントスキル」の3つに大別される。

まず「ビジネススキル」とは、まさに仕事に対する能力のことだ。また「マネジメントスキル」とは経営者に向いているかどうかの能力。宴会を通じて判断されるのは、宴会を企画する側ならマネジメントスキルもそうだが、やはり「ヒューマンスキル」、つまり人間性とかユーモアのセンス、人間関係に関するあなたの持ち味や人柄である。

「天は二物を与えず」というが、この3点の要素をバランスよく持っている人は、まずいない。そこで、中国人にとっては、大切な要素がこの「ヒューマンスキル」すなわち「人間関係」なのである。だから中国人は宴会を通じて「気心」を知りあい、「人間関係」が正常に維持できれば、商売関係もうまく行くと考えるのである。

もし、中国人の得意先が宴会の時間を(自分の会社に)割いてくれているのなら、それは「あなたの会社を大事にしています」ということと同義語である。たとえば、買い手、売り手にかかわらず、中国のミッション(訪問団)が複数の日本の顧客を訪問するときには、インビテーションを出した企業(当然ながらキーパーソンや重要客先が同席する大前提があるが)とのビジネスが優先される。

一方、新規にビジネスが期待されるケースや、昔は大きな取引をしていたが現在は需要が落ち込み取引が中断している場合などは、状況を判断して宴会の設営をしなければならない。もちろん、むやみやたらに親近感を作るために、宴会さえすれば距離が縮まるというものでもない。

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