私自身、中国ビジネスを始めて36年になるが、多くの仲間や部下と一緒に仕事をしてきた経験から言えば、宴会上手の中国人は、とりわけ商売上手である。
もちろん日本人にも当てはまるが、逆に下手な宴会しかできないビジネスマンは、商売失格、と言っても過言ではない。
中国では宴会料理のオーダーをするのは、主人側の秘書役(実質的なナンバー2)であることが多い。彼の役割は客人と主人の趣味嗜好に合わせて、料理の量と質と金額をよく吟味して注文を入れるのである。
一般的にこうした秘書役はトップの意をくんですべてを取り仕切る役割を担う。こまごまとした雑務から社内人事にまで影響を及ぼす場合もあり、なんと宴会料理の内容にまで口を挟むのが中国文化では実力者なのである。だから、秘書をやった経験のある人物が中国企業の中でトップにまで駆け上がるケースも多い。言ってみれば宴会上手なだけで(あまり仕事もせず?)偉くなるのが中国人社会だという、うがった見方もあるくらいだ。
なぜ、中国人はそれほどまで宴会を重要視するのか? 日本人にとっては「大げさな話」と思うだろうが、中国人にとって宴会料理のオーダーを入れることは、それほど重要なイベントなのである。
韓国などほかのアジアでもそうだが、中国語では、「ごはん食べた?(你吃饭了吗?)」をあいさつ代わりに使うほど、食事は重要だ。私が思うに、これは中国が多民族国家で、生き残るための生存競争がつねに行われているからだろう。ついちょっと前までは、多くの餓死者の出たほどであり、食事は中国人にとってなお重大事である。まず、お腹を満たすことが大事であり、食事に対する飽くなき欲望が、宴会文化にまで影響したのだと思う。
宴会で吟味されるのは、料理だけにあらず
さて、中国の正式な宴会では、主人(会社の社長など)は、あらかじめ用意されたメニューを宴会の前にチェックして、気に入らない料理があれば直前でも容赦なく変更する。
一方、仲間内の宴会の場合には、宴会場に入ってからメニューを見て注文を入れる場合も多い。結構な時間をかけてオーダーをするので、主人とお客さんは宴会場のソファーに座って、ゆっくりお茶を飲みながら待つのである。
そこで、チェックされるのが宴会料理の内容だ。列席者は宴会料理の内容を見て、注文を入れた秘書役の営業センスを、厳しく評価するのである。
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