若者が「モクテル」に飛びついた納得の事情 「変わった行動」の中にある潜在ニーズとは

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ほかにも、清涼飲料市場で私が注目している動きがあります。

最近、ファミレスやカラオケに行くと、ドリンクバーのUI/UXが変わって「モクテル」と書かれていることに気づきます。モクテルとは、似せた・まねたという意味のmock(モック)とcocktail(カクテル)を組み合わせた造語です。

ドリンクは1つだけ選ぶはずが、積極的に複数のジュースを混ぜるよう促しています。昔はオレンジと炭酸を混ぜていると店員から「飲み物で遊ばないでください!」と怒られましたが、今ではメーカーが積極的に「飲み物で遊んでください!」と訴えかけているのです。

なぜなら、消費者にとって止渇、口の中を洗い流すだけが目的なら、それこそ水でいいからです。ドリンクバーを頼む必要がありません。そこで「過ごしている時間を楽しめる」という意味を込めてドリンクバーがモクテルにバージョンアップされ、友達とさまざまな清涼飲料水を混ぜ合わせて楽しむ時間が提供されるようになりました。

最近は世界中の若者を中心にアルコールが忌避されます。でも、シラフで楽しめる飲み物は多くありません。ソフトドリンクだと子供っぽいし、ノンアルコール飲料だと物足りない。そこで海外で注目されているのがモクテルです。お酒を飲んでいる人たちと同じように、かつ華やかな雰囲気を邪魔せず楽しめるドリンクとして注目されています。

おそらく、この数年のうちに「モクテル」は大きく広がるのではないか、と考えています。

見過ごしてきた中に、「新たな意味」があるかも

どうすれば、ペットボトルで水を飲んでいるだけなのに「冷たく澄んだ空気に触れたいんだ」と気づけたり、飲み物を混ぜて遊んでいるだけのに「過ごしている時間を楽しみたいんだ」と気づけたりするのでしょうか。

正確に言うと、今までもそういう消費者はいました。ただ私たちマーケターは、企業から見ると間違った使い方や、想定していなかった使い方をする人たちを「変わった行動だね」と見過ごしてきただけです。

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マーケティングのデータ分析をする際、私は必ず、原因と結果に分けて考えるようにしています。同じような行動(結果)に至る背景には、その人にとってはやる意味があると感じた理由(原因)があるはずです。大半の理由は、すでに「既知の意味」かもしれません。しかし中には商品・サービスにも自カテゴリにも実装されていないし、満たせていない「新たな意味」があるかもしれません。

インサイトリサーチでおなじみの私たちデコムは、変わった行動をする人たちを収集するサービスも展開しています。グリコ「アイスの実」を100%果汁ジュースに混ぜる女性や、気管支が弱ったときに必ず塩ラーメンを食べる男性、普段は介護に合わせた食事ばかりなので週末はホルモンなど固い肉を食べに行く男性……わかる!から、何それ?まで約2000件取りそろえています。

目を向けるべきは、顧客とは限りません。むしろ非顧客、ライトユーザーの「変わった行動」に隠れた意味を見つけ出せば、今まで自社ブランドを一切買ってくれなかった層が一斉に手に取ってくれる可能性があるでしょう。

松本 健太郎 デコムR&Dマネージャー

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まつもと けんたろう / Kentaro Matsumoto

1984年生まれ。龍谷大学法学部卒業後、データサイエンスの重要性を痛感し、多摩大学大学院で"学び直し"。現職では、データサイエンスに基づき、ユーザーの心を捉えたアイデアを引き出す「インサイト」の開発支援に携わる。政治、経済、文化など、さまざまなデータをデジタル化し、分析・予測することを得意とし、ラジオや雑誌にも登場している。

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