若者が「モクテル」に飛びついた納得の事情 「変わった行動」の中にある潜在ニーズとは
壁に取り付ける家具のために、必要な穴を開けてくれる価値があるからドリルを買うのであって、ドリルよりも安価・安全に穴を開けてくれる「ほかの何か」があれば、ドリルは瞬く間に市場を奪われてしまうでしょう。
ちなみに、ここでいう価値をもう少し細かく分けると、機能価値・情緒価値と表現できます。機能価値は名前のとおり、商品・サービスの優れた機能が消費者に与える価値です。情緒価値は一見難しく感じるのですが、ロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』では"意味がある"と表現されています。確かに「穴を開ける」だけなら機能価値の側面が強く、情緒価値の側面から見たら「だから何なの?」「私にとって意味あるの?」と感じます。
これからのマーケターに求められるもの
商品・サービスに真の差別化をもたらすものは情緒価値です。『突破するデザイン』の巻頭で、ものすごく重要な指摘がなされているので、その一部を抜粋します。
消費者は機能だけでなく意味も求めているのに、私たちマーケターは機能ばかり訴求していないでしょうか。軽いです、2倍の速度で穴を開けられます、耐久性に優れています……それらは、どんな「意味」があるでしょう。
「音がしないからご近所の迷惑になりません。集合住宅でとにかく周囲の目が気になるあなたに必要です」という訴求で、重くて、穴が開くのに時間もかかるけど、いっさい音がしないドリルに、いきなり市場を奪われるのです。
「意味」に目を向けて、商品・サービスに実装する能力が、これからのマーケターに求められます。消費者の求める意味から新たなニーズが発見できるからです。消費者を理解するためにデモグラフィック属性や趣味・嗜好を知るマーケティングをアップデートし、日常生活でどのような意味を求めているかを把握する機会が、これからのマーケターには求められます。
いろいろと調べる中で出会った「サントリー天然水」ブランドに関する意味の話は、最も感銘を受けた1つです。
ブランドチームはリサーチを通じて、ペットボトルを開けた瞬間、あの南アルプスの山々の冷たい空気が吹き抜けるような気がする、という消費者の心の声に気づきました。
満員電車に揺られてやる気がなくなった朝、煮込みすぎた白菜のようにくたくたになった夜、「南アルプスの冷たく澄んだ空気」を感じられたら、さぞリフレッシュできるだろう、という「意味がある」から消費者は「サントリー天然水」ブランドを手に取っているのです。
止渇という機能だけでなく、意味の実装により、「サントリー天然水」ブランドは驚異的な成長を続けています。ちなみに「サントリー天然水」ブランドは2018年、国内清涼飲料市場で年間販売数量1位を獲得しています。
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