中国政府が抱えるドルという“爆弾”--ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授

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だが、米国は事態を是正するために思い切った行動をとることなく、金融部門に資金を供給し続けた。同じように、生産性向上と国内消費の拡大を迫られた欧州では、経済改革が遅々としたペースでしか進まず、中国は輸出主導の成長戦略を継続した。

こうした米国の借金生活にブレーキをかけたのは、金融危機だった。米国の経常赤字は、数年前は国民所得の7%であったが、現在は3%にまで縮小している。米国がやっと手に入れた節約生活はいつまで続くのだろうか。

今後5年から10年ドル危機のリスクは大

米国政府は国民所得の12%(金額では1・5兆ドル)という途方もない額の財政赤字を計上しており、家計や企業の貯蓄が増えないかぎり、海外からの借り入れが減ることはない。当分の間、民間部門は政府の財政赤字の約75%を引き受けることになるだろうが、民間部門の倹約はいつまで続くかはわからない。

今後、経済が正常化するにつれて消費と投資は復活するだろう。そのとき、政府が緊縮財政をとらないと仮定すると、米国における外国資本への需要は再び急増するはずだ。

当然のことながら、米国政府は「借金を抑制する」と主張するだろうが、経済が現在の不況から本格的に脱出するのにさらに1年か2年かかるとすれば、政府がピッツバーグの誓いを守って、財政赤字削減を実現するのは難しい。

もちろん、FRB(連邦準備制度理事会)が、金融政策を引き締めることは可能だ。ただ、“今”の金融危機の後遺症に苦しんでいるときに、“次”の金融危機を懸念してFRBが金利を引き上げるとは思えない。最近、私はカーメン・ラインハルト・メリーランド大学教授と『This Time is Different』と題する本を上梓した。本書の執筆中に私が発見したのは、「金融危機に教訓があるとすれば、それは後遺症が非常に長く尾を引く」ということだった。

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