就活と院試が両立できない理系学生のジレンマ 本格的な研究しなくても企業は評価するが…

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理系を勧めるのは、やはり「就職に有利」という側面が強い。マイナビの就職内定率調査によると、2020年卒(大学4年生、大学院2年生)の8月時点の内定率は、文系学生が、男子78.7%、女子80.4%という数字に対し、理系男子87.1%、理系女子88.8%と、10ポイント以上の差をつけている。

早い段階で内定を得ているのも理系の学生で、「メーカーだけでなく銀行や総合商社なども理系人材を求めており、争奪戦の状態」(文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所・平野恵子所長)だという。

中でも、リケジョ(理系の女子)への採用ニーズは高い。極小ベアリングや電子機器製造の大手メーカー、ミネベアミツミの山本洋・人事部次長は、「工学系で学んだ女子学生は人数も少ない。とくに採用したい」と語る。

製造現場以外でも、WebマーケティングやRPA(ロボットによる定型作業の自動化)などビジネスの現場が大きく変わる中、それを使いこなせる人材の確保が急務になっている。さらに営業の現場でも、「法人の顧客などはコミュニケーション力よりも論理的に説明できる理系人材のほうが、ウケがいい」(銀行の人事担当者)という状況が生じている。理系人材の活躍する場が想像以上に増えている。

研究室入りと同時に就職活動

しかし理系学生の就活は簡単ではない。研究との両立が避けられないからだ。

理系学生の場合、とくに国立大学のカリキュラムは、1~2年生は教養課程が中心で、3年生から専門課程中心に移行する形になっている。多くの理系学生は、4年生から研究室に入ることになる。

ようやく、自分がやりたい研究を始められる状況なのに、同時に就職のことを考えなければならないからだ。

理系学生に特化した新卒採用サービス「ラボベース」を運営するPOLの調査によると、大学院生の3人に1人が決められた時間に在室を求める「コアタイム」を設定する研究室に所属しているという。

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