アマゾンの制裁で会社を潰しかけた36歳の告白 月500万円の売上がアカウント停止後に凍結

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「レビューのついた商品ページは、出品者にとって貴重な財産なんです。それまで売れていた商品の1つに鷹の置物がありました。ハトや雀が怖がって近寄って来なくなるようにするための置物です。60件ほどレビューが付いていて、害鳥対策というキーワードで検索すると、検索ページのトップに出てきていました。

その鷹の置物は、以前なら、1日15台ぐらい売れていたのですが、新しく出品するとまったく動かないのです。アマゾンではどんなレビューが付いているのか、過去にどれぐらい売れたのか、また、お客さんがどんな導線をたどって商品に行きつくのかで、同じ商品を出品しても、売れ行きが全然違ってくるんです」

同年8月末、永井は、信用金庫と地方銀行のカードで、100万円ずつ借り、従業員の給与と売掛金の支払いに充て、倒産を覚悟した。

「僕が起業するのを助けてくれた嫁さんには、正直に、もうすぐ倒産することを話し、平謝りしました」と永井は語る。

しかし、9月に入ると新しいアカウントに載せた商品が、急に売れ始めた。ようやく資金が入ってくるようになり、どうにか息を吹き返す。

「会社の銀行口座には10万円が残っていただけでした。危なかった。ほとんどアウトでしたね」(永井)

新しいアカウントを立ち上げてから、相乗りで出品することをいっさいやめ、オリジナル商品の販売に専念した。また、同業他社が、永井がオリジナルで作った商品に相乗りしてきても、文句を言わないようにしている。二度とアマゾンに目をつけられることがないよう、ひっそり息を殺すようにして日々の商売を進めている。

「アマゾンのことが大嫌いになりました」

永井はこう話す。

『潜入ルポ amazon帝国』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

「このごたごたのせいで、アマゾンのことが大嫌いになりました。プライム会員はやめましたし、娘のために買った《Fire TV Stick(アマゾンのプライム・ビデオなどをテレビで見るための機器)》も、妹夫婦に譲りました。アマゾンでは絶対に買い物はしません。ネットで買うときは、応援する意味も込めてネット通販2位のヨドバシカメラで買います」

永井は今後、アマゾンでの販売をやめるつもりなのだろうか。

「やめられるのならやめたいですけれど、僕はひ弱なのでやめられそうにありません。集客力ではアマゾンが1番ですから。そのサイトを避けては、売り上げが取れないんです。会社の売上高は、今期8000万円に手が届きそうです。来期は2倍の1億6000万円を目指し、2年後には3億円を目指します。当面は、大嫌いなアマゾンに頼ってでも、会社の規模を大きくしていくしかありません」

永井は自嘲気味にそう語った。

(文中敬称略)

横田 増生 ジャーナリスト

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よこた・ますお / Masuo Yokota

1965年福岡県生まれ。関西学院大学を卒業後、予備校講師を経て、アメリカ・アイオワ大学ジャーナリズムスクールで修士号を取得。1993年に帰国後、物流業界紙「輸送経済」の記者、編集長を務める。1999年よりフリーランスとして活躍。2017年、『週刊文春』に連載された「ユニクロ潜入一年」で「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞を受賞(後に単行本化)。近著に『「トランプ信者」潜入一年』。

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