こうした連邦による緊密な国家間の関係は、イギリス以外の連邦で生まれ育ったがイギリス国籍者、イギリスで長く生活している連邦国籍者など、実に多様な国籍と生活圏の組み合わせを生み出しています。
ラグビーの代表資格に話を戻しますと、国籍にこだわらず、いつも身近なチームでプレーして活躍している選手もその国の「仲間」として代表になってもらえるよう、現在のような緩やかな代表資格になったのです。日本でも海外の人と生活をともにする機会が増えていますが、ラグビーのこの国籍を超えた「仲間同士」の精神はほかの分野でも参考になるのではないかと思います。
イギリスでもう1つ、おそらくみなさんが気になっていることは、サッカーやラグビーワールドカップで、「イギリス(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland:UK)」という国としての参加はなく、ウエールズ、スコットランド、イングランド、英領北アイルランドといった「カントリー」といわれる単位で参加していることでしょう。
これはなんだかズルい気がしますが、そもそも最初にこうしたスポーツ大会をUKのカントリー同士で開催していたところ、それが国際大会に発展したという経緯なので、今でもUKの4カ国だけは特例となっています。
実はイギリスのこの4つのカントリーについてはそれぞれに文化も違い、それぞれに英語以外の公用語もあったりと、かなり多様性を持ったまま1つの連合王国(UK)を構成しています。記憶に新しいところではスコットランドの独立問題など、ある程度緊張感のある関係性で、日本の県や、アメリカの州のような行政区分とはまったく違うものです。
アメリカは英国連邦に入っていない
日本から見たイギリスといいますと、紳士の国、紅茶の国、バグパイプやビートルズの国、最近ではハリー・ポッターの国という印象があるかもしれませんが、実はいろいろな背景を持った人や地域の複合体であり、実に複雑な国なのです。
英語圏の国で日本にとってもう1つ、非常になじみ深い国としてアメリカがあります。その成り立ちからイギリスとは特別な関係にあるアメリカですが、英国連邦のようなイギリスを中心とした国際的な枠組みには入っていません。
アメリカではアメリカンフットボールが国民的人気スポーツで、ラグビーはW杯にこそ出場していますが、アメフトに比べるとまったく人気がありません。アメフトの最高峰NFLのトッププレーヤーともなれば数十億円の報酬があるスーパースターですので、少年たちの憧れのスポーツはいつの時代もアメフトか野球です。
その野球のワールドカップに相当するWBCも、主要な国はアメリカ、キューバ、メキシコ、ドミニカ、プエルトリコ、ベネズエラ、日本、韓国、台湾といった国と地域が有力チームで、地域的にアメリカに近い国で盛んなことがうかがえます。英国連邦が中心のラグビーとはまったく顔ぶれが異なる点が面白いですね。
実は、英国連邦の諸国は「Commonwealth Games」というオリンピックのような総合的なスポーツ大会を4年に1回開催します。各国の国民も熱狂し、私も子供の頃は夢中になってジャマイカやカナダを応援したものです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら