歌舞伎町で生き残るバッティングセンターの謎 通うお客とお店側、それぞれの"思い"がある

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平日もお客で混み合う店内。客層は老若男女さまざまだ(写真:筆者撮影)

客層は歌舞伎町の関係者が多いのかと思いきや、「全然違うんです」と村山さん。平日の昼から夜にかけては学生や会社員。夜からは水商売や歌舞伎町で働く人、お酒を飲んだ帰りの人、外国人などが増える。土日は野球部やソフトボール部の学生、リトルリーグの子どもたち。レディースデイの水曜日は朝から女性が行列を作ることもあるという。

だが、かつては圧倒的に日本人男性が多く、現在の客層になったのはここ5年ほどと最近だ。歌舞伎町の人々の属性は、2003年ころから始まった歌舞伎町浄化作戦などによって大きく変化している。物騒なイメージが薄れ、誰もが気軽に訪れやすくなったが、ただ待っているだけでは客は増えない。同店においては、性別や国籍を超えて受け入れられるお店づくりをしてきた結果だという。

男社会だった店内を女性や外国人客も楽しめるように

意識的に女性向けのサービスを拡大させた(写真:筆者撮影)

「もっと多くの人に来てもらうにはどうすればいいか。そう考えたときに、お店を見つめ直したら、映った光景は男社会だったんです。たまに男性と一緒に来る女性もいましたが、自ら訪れる女性はほぼいない。お店が男性しか楽しめないような状態だったのかもしれません」

そう感じた村山さんは、お店を見直していった。女性用の手袋や軽めのバットを用意。ハイヒールやサンダルの女性向けに、スニーカーの貸し出しも始めた。女子トイレにはカードを置き、窓口で差し出すと生理用品やストッキングを購入可能に。また割安で楽しめるレディースデイや、女性専用の回数券を設けたところ、半年ほどで女性客が急増した。女性に連れられて男性客も訪れるため、結果的に男女ともに客数が増えたという。

さらに、近年増え続けているインバウンド客向けに、多言語対応のポスターやパンフレットを作成して店外に設置。すると狙いどおり、外国人客も増えていった。

外国人向けの英語ポスター(写真:筆者撮影)

「歌舞伎町には女性も外国人も男性もいっぱいいます。お店に来てもらえないのは何かしら溝があるからで、それは店側が埋めていく必要がある。街にいる人が変化している以上、迎え入れる姿勢を整えないと来てもらえませんし、喜んでももらえませんから」

プロ野球も、かつては男性のスポーツという印象が根強かったが、各球団が努力や工夫をした結果、「カープ女子」など女性ファンが増えていった。同様に新宿バッティングセンターも、街や時代に合わせて柔軟に変化することで、女性や外国人などそれまでいなかった客層が来店するようになったのだ。

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