歌舞伎町で生き残るバッティングセンターの謎

通うお客とお店側、それぞれの"思い"がある

では同バッティングセンターに、お客さんはどのような目的で来るのだろう。村山さんによると、体を動かしたい人、日頃の鬱憤を晴らしたい人、連れている女性にうまいところを見せたい人などさまざまだという。

実際に常連客に話を聞いてみた。新宿バッティングセンターで累計2000本以上のホームランを記録し、「歌舞伎町のホームラン女王」と呼ばれる初谷純代さんだ。

初谷さんが通い始めたのは2006年。当時は運動不足解消のため、夜中に散歩をするのが習慣だった。新宿バッティングセンターが朝まで営業していることを知り、ここで体を動かすほうが面白そうだと、野球経験者の彼氏と軽い気持ちで訪れたのがきっかけなのだそう。

お客さん同士で交流する楽しさも

「歌舞伎町のホームラン女王」と呼ばれる初谷純代さん(写真:筆者撮影)

野球を観たこともなく、バットの握り方すらわからなかった初谷さんだが、通い始めて3日目で初ホームランを放つ。それから夢中になり、多いときは週5~6日も通い、月に数十万円を使うこともあった。

「うまくなりたい一心でしたね。私は野球経験者じゃないし、女性だし体も小さい。なめられたくない思いがあって通うようになりました」

2012年、初谷さんは当時の歴代最高となる月間52本のホームランを記録した。打った瞬間は足が震え、涙が出そうになったという。現在、その記録は塗り替えられてしまったが、次の目標として月100本を目指しているそうだ。

新宿バッティングセンターには、お客さん同士で交流する楽しさもあると初谷さんは言う。

「お店にはその時々の常連さんがいます。もちろん、私より前から通っている人もたくさん。みんな何をしている人か知らないし、会話もここだけの内容(バッティングや野球)ばかりですが、バッティングセンターを通じてつながっているのが面白いですね」

ホームランの記録を出したときは、お客さんもスタッフも一緒になって喜んでくれたと、初谷さんは感慨深げに語った。1991年からここで働き、現在は副店長を務める田島健二さんも同様の意見だ。

「昔は強面のお客様もいましたし、店内でケンカが始まったことも何度かありましたけど、最近はそういう方も目立たなくなってきました。昼のお仕事の人も、夜のお仕事の人も、いつ来ても楽しめる場所になっています」

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