財務省による診療報酬のマイナス改定提案は、今に始まったことではない。2年に1度の診療報酬改定に合わせて、2017年にも同様の提案があった。しかし、医療関係者の心中は穏やかではない。診療報酬がマイナス改定になれば、診療報酬単価を下げられる可能性が高くなるからだ。
単価が下がっても、高齢者が増えて患者数が増えれば、医療機関の収入は増えることもありうる。診療報酬の改定率には、患者数の変動の影響は含まれていない。従って、マイナス改定が直ちに医療機関の収入減少を意味するわけではない。
とはいえ、マイナス改定となると、医療関係者の間で「パイの奪い合い」が激しくなる。
小泉政権期以外、診療報酬本体はプラス改定
第2次安倍内閣以降の過去3回の診療報酬改定(消費増税対応分を除く)をみると、診療報酬全体では、2014年度はプラス0.1%、2016年度はマイナス0.84%、2018年度はマイナス0.9%だった。
その内訳をみると、2014年度は診療報酬本体でプラス0.73%、薬価等でマイナス0.63%、2016年度は本体でプラス0.49%、薬価等はマイナス1.33%、2018年度は本体でプラス0.55%、薬価等でマイナス1.45%だった。財務省は否定するが、薬価を下げて浮いた財源を診療報酬本体に振り替えているようにみえる。
薬価を下げられると困るのは製薬会社である。診療報酬本体が増えると喜ぶのは、病院、診療所、薬局である。
薬価は、先発薬の特許が切れて価格が安い後発医薬品(ジェネリック)が出ることで単価が下がる効果があり、1990年度以降はずっとマイナス改定だった。診療報酬本体は小泉内閣期に、2度のマイナス改定と1度のゼロ改定はあるが、それ以外はプラス改定である。
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