「今後も株高が続く可能性は低い」と考える理由 一喜一憂しながら上昇する株式市場に危うさ

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だが各地域の製造業景況感を含めた景気先行指数の動きを俯瞰すると、底入れを示しているのは一部で、多くは減速の長期化の兆候を示している。日本の電子部品デバイスセクターの在庫率低下については、この在庫統計は液晶メモリなどごく一部の品目しか反映されていない。米アップル社などの新型スマートフォン発売、米中の関税引き上げを前にした駆け込み生産増加が、一時的な在庫調整を進めた可能性がある。

各国の政策対応は2016年に比べて不十分

もし筆者のこうした慎重な見方が外れるとすれば、各国の大胆な金融財政政策が経済成長率を高めることだ。2016年前半から2018年前半まで世界経済が上向いた時は、FRB(米連邦準備制度理事会)が利上げを撤回、その後2016年末にかけてのトランプ政権の誕生を通じて財政政策が拡張方向に大きく転換した。また、2016年前半までの減速局面の中で中国では、中銀が利下げを行い、政府が財政政策を積極化させた。また、2016年は欧州では緊縮財政政策が終わり、日本では消費増税を先送りして若干ながらも拡張的な財政政策に転じた経緯がある。

2016年と2019年を比べると、まず中国では中銀が政策金利引き下げなど大幅な金融緩和に至っておらず、日本では緊縮財政に転じており、これらの対応が世界経済の足かせになっている。一方、アメリカでは、FRBが利下げに転じ、2019年からインフラ投資など政府支出がはっきり増えている。欧州ではECB(欧州中央銀行)が量的金融緩和を再開させ、デフレ回避を重視する政策に転換した。これらの対応は、世界の成長率の下支えとなりうる。

ただ、各国の政策対応を総合してみれば2016年と比べると、経済成長率の押し上げ効果は不十分だろう。世界経済が早期に底入れするには、より広範囲な各国政府、中銀による対応が必要になると思われる。今後景気減速が長期化し、政策当局がより積極的な政策対応を余儀なくされた時が、世界経済減速に歯止めがかかるタイミングになると予想している。

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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