LVMHが「ティファニー」を心底欲しい3つの理由

老舗企業に1兆5800億円で買収提案

1つは、高級品分野でも宝飾品は市場拡大余地が大きいからだ。アメリカの調査会社グランド・ビュー・リサーチによると、世界の宝飾品市場は中国やインドでの著しい需要増によって年率平均8.1%伸び、2025年には4805億ドル(約52兆3000億円)に達する見通しだ。LVMHにおいても、時計宝飾品事業の伸びはめざましく、2018年12月期は売り上げが前年比8%増、営業利益については同37%も伸びている。

が、目下LMVHは、宝飾事業においてはヴァン・クリーフ&アーペルやブチェラッティを傘下に持つ、3大ラクジュアリー企業の一角、リシュモングループや、カルチェなどの後塵を拝している。収益こそ拡大しているものの、LVMHにおける宝飾品事業規模はファッション・革製品事業の4分の1ほどにとどまっており、ティファニーを傘下に収めることで一気に競合との差を詰めたい考えだ。

世界でも数少ない「独立系」宝飾品ブランド

もう1つの理由は、1837年創業のティファニーが世界では残り少ない独立系宝飾品ブランドだということ。LVMHが、エルメスやシャネル、アルマーニ、プラダといったライバル企業から傘下ブランド買い取ることは難しいほか、ロンドン証券取引所に上場しているイギリスのバーバリーはアルノーCEOの好みではないとされる。

ティファニーがラルフローレンと並ぶ、数少ないアメリカの高級ブランドで、売り上げの半分近く(2018年度は44%)をアメリカ事業で稼いでいることも大きい。ブランド事業に乗り出す前、1980年代前半にアメリカで暮らしたこともあるアルノーCEOはアメリカに対する思い入れが強く、10月中旬に開かれたテキサス州にルイ・ヴィトンの新工場の落成式では、ドナルド・トランプ大統領との親密ぶりをアピールしていた。

今回、LVMHは1株120ドルでティファニーを買収すると提案したが、28日のニューヨーク証券取引所ではティファニー株が急騰。一時は提案額を大きく上回る130ドルに値を上げた。こうした中、当面は両社間で微妙な心理合戦が行われる公算が高い。

ティファニーに対しては、リシュモンのほか、グッチやイヴ・サンローランなどを傘下に持つフランスのケリングも買収に関心を持っているとされており、LVMHが買収額をすぐに引き上げることはないだろう。一方、ティファニー側が今回のLVMHの提案額を受け入れる可能性は低く、アルノーCEOが諦める程度まで買収額を引き上げるのではないか、という見方が出ている。強気経営を貫くアルノーCEOはどこまで踏ん張るだろうか。

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