多世代が住む中野区の「コンパクトな街」の凄み 医療・介護との連携、多世代居住などを実現

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ところで、積水ハウスだけでなく、現在いくつかのハウスメーカーがコンパクトシティによる都市再開発に力を入れている。例えば、ミサワホームが2018年に千葉県浦安市東野地区で竣工した複合商業施設「ASMACI浦安」がその1つだ。

浦安市、医療法人社団「やしの木会」、京葉銀行、ミサワホームとの共同事業であり、医療・介護・保育・商業・住居などの機能を備え、国が支援する「スマートウェルネス拠点整備事業」として地域包括ケアシステムの構築を目指した拠点施設となっている。

旭化成ホームズが2017年から滋賀県草津市において、再開発組合に加盟し取り組んでいるJR草津駅前の「北中西・栄町地区第一種市街地再開発事業」(草津市による大規模市街地再開発事業の一部)も事例の1つである。

グループ会社の旭化成不動産レジデンシャルによる分譲マンションを中心とする26階建の高層棟と、4階建の低層棟が建設され、1階と2階に魅力ある店舗を誘致するほか、低層棟にサ高住を併設するなどというものだ。

住宅事業で培ったノウハウを生かす

上記のようにハウスメーカーがコンパクトシティ型の都市再開発に取り組むのは、これまでに住宅事業で培ってきたノウハウを活用できると判断しているからだ。ミサワホームの事例は、グループ企業のマザアスによる高齢者介護や医療などのノウハウの多大な蓄積を生かすものだ。

旭化成ホームズは、権利関係が複雑な老朽化したマンションの再建築に国内トップクラスの実績を有する企業であり、そのノウハウが土地などの権利関係が厳しい現地の再開発を推進するのに役立てられている。

「北中西・栄町地区第一種市街地再開発事業」の完成イメージ(旭化成ホームズ提供)

さらに、前述の積水ハウスが参画した「江古田の杜」には、「コドモイドコロ」という戸建て住宅の設計ノウハウ、「ひとえん」という戸建て分譲地の住民コミュニティー形成のための手法を導入したものである。

コンパクトシティは、郊外に商業施設が散在することにより中心市街地が空洞化したことの反省から開発が進められてきた経緯があり、駅前などに大規模商業施設などハコモノを造ることに重点が置かれ、結果的には成功している事例は少ないようだ。

今回、紹介したハウスメーカーによるコンパクトシティの取り組みは、規模こそ従来の事業ほどの大きさはないかもしれないが、医療や介護、そして多世代居住などの観点を含めた取り組みであり、従来型のものと比べ将来的にも期待できる再開発手法といえるのではないか。

また、少子高齢化社会における住宅産業の持続的な発展を目指すものとしても、今後の推移が注目される。

田中 直輝 住生活ジャーナリスト

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たなか なおき / Naoki Tanaka

早稲田大学教育学部を卒業後、海外17カ国を一人旅。その後、約10年間にわたって住宅業界専門紙・住宅産業新聞社で主に大手ハウスメーカーを担当し、取材活動を行う。現在は、「住生活ジャーナリスト」として戸建てをはじめ、不動産業界も含め広く住宅の世界を探求。

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