多世代が住む中野区の「コンパクトな街」の凄み

医療・介護との連携、多世代居住などを実現

そこで、このような課題を解消するべくコンパクトシティが開発された事例として、中野区の江古田3丁目地区に2018年8月に完成した「江古田の杜(もり)」がある。都市再生機構(UR)、総合東京病院、積水ハウスからなる「江古田三丁目地区まちづくり協議会」が中心となり開発が進められたものだ。

現地は国家公務員宿舎の廃止に伴い、跡地(約4.4ha)をURが2008年に取得。前出の中野区の課題や区北部に小児初期救急診療、病児・病後児保育などが不足しているなどの地域特性を踏まえ、集合住宅、医療、保育施設などからなる複合開発が行われた。

具体的には区内最大級の分譲マンション(531戸)、総合東京病院の新棟、病院関係者向け集合住宅(56戸)、子育て世帯向け賃貸マンション(263戸)、学生向け賃貸マンション(85戸)、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住、121戸)、介護付き有料老人ホーム(94室)からなる。

敷地内には、住民のコミュニティー拠点「リブインラボ」が配置され、レストランやキッズルーム、カラオケルーム、絵本ライブラリー、多目的ルームなどがあり、付帯施設としてコンビニエンスストアや認可保育園、学童クラブも開設されている。

多世代共生とその循環が狙い

上記の構成をみると、子ども、学生、子育て夫婦、高齢者までさまざまな世代が共に暮らせ、入居者が分譲・賃貸マンションからサ高住などへとつねに循環する街づくりを目指していることがわかる。いわば多世代共生・循環型のコンパクトシティといえる。

「江古田の杜」内の「リブインラボ」の様子。親子連れの中に高齢者の姿も数多く見受けられた(筆者撮影)

積水ハウスによると、完成から約1年が経過した時点における入居者(分譲と賃貸、サ高住、老人ホームの合計)の割合は、20歳代以下が36.6%、30歳代が29.2%、40歳代が11.4%、50歳代が6.6%、60歳代以上が16.2%となっている。

つまり、一般的な分譲マンションや戸建て分譲地によくみられる、入居者のほとんどが子育て世代という極端な偏りが発生していないわけだ。

ただ、この状態が長期的に継続するとは限らない。多世代が共に暮らす環境を維持するための仕掛けが求められる。

「えごたのもり文化祭」は周辺の住民も交え実施されていた(筆者撮影)

さて、9月22日に「えごたのもり文化祭」と銘打たれた開発エリアと周辺の住民を巻き込んだイベントが開催された。

これがさまざまな世代の人たちが暮らす環境を維持する仕掛けの1つであり、筆者は現地に赴き、どのようなことが行われているのかを確認してきたので以下で紹介する。

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